いろいろしょーせつ | ナノ
ワクワクしながら入学式を迎えた訳ではない。今のクラスメイトは、私の知らない場所で知り合って既に仲が良く塊を作っている。
(はて、どこで知り合えたのか?)
勝家は一人、窓の外を眺めていた。
窓の外から見た景色は、保護者と教員らしき人達で溢れて居る。桜がヒラヒラと舞っている。
ぼんやりと眺めていると、肩を叩かれ、思わず振り返った。一瞬、びっくりし目を見開いたが次には目を細め相手を睨んだ。何の用だ、と口を開こうとしたがやめた。瞬時にやめるほど何かの気を感じた。
「はじめまして!仲良くしようぜ!」
「はあ……柴田勝家です。」
いきなり声を掛けられたのだから、間抜けな返事をしてしまった。
「アンタの名前はなんて言うの?」
「柴田勝家だ……。」
「俺は島左近、よろしくな、勝家!」
下の名前で呼ばれ、新鮮な気持ちになった。だが、ある言葉が引っ掛かる。
(すぐに仲良くだと……?)
少し考えるが、どうして初対面から仲良くなれるのか。私には分からないからか顔をしかめていたに違いない。
その顔を見て島は何か言い掛けた時、担任が入って来たので周りの人達は席に戻る。勿論、島もじゃあな、と言い席に戻っていった。
担任の説明を聞き流しながら勝家は俯く。
(私は間抜けだ。声を掛けて下さった人もいずれ、離れて行ってしまう……。)
入学式早々、暗くどんよりした想いが覆う。
特に昔、苛めを受けた事などは無い。
だが……。
視線を逸らし見た机は新品同様で綺麗な亜麻色をしていた。
(この学校に怪談などは無いのだろうか。)

入学式を無事に終え、下校する際に声を掛けられた。勿論、相手は島左近だ。
「今から帰らない?」
「……私なんかで良いのか。」
ニコニコと笑うその姿は眩しい。きっと、誰からにも好かれているのだろう。
「それしかないしょ?」
さあさあ張った!と言わんばかりの勢いで私の腕を引っ張る。多分、嫌な表情をしてしまっているのだろう。
「じゃあ、まずは昼飯からっすね!」
「昼飯など……食べなくでも大丈夫だ。」
そう怪訝そうに答えると、左近はゲゲッ!と「昼飯抜きとか〜無理っしょ。」と返した。
「あと、お金を持ってない!」
「それなら大丈夫っすよ。俺んちで済ませるんで。」
「??」
(初対面の私を上がらせる?!どういう神経をしているんだ……この男は。)
驚きを隠せないまま着いていくと、アパートのような場所に来た。
マンション住みだと考えていたが……そんな願望よりも怖い気持ちになる。見た目はチャラそうだし、不良の一味かも知れない。
「島、一つ聞きたい。何故、初対面の私を此処まで連れて来た?」
「いや……俺も仲良くなりたいって言うのもありますよ!でも、それよりも先に賭けで言われてるんです。」
賭け?私は入学早々、初対面の奴に人柱にされてしまうのか。
よく水に関する場所である話だ。勝家は密かに怪談の世界に入った。

ーーー
左近の家は親戚と縁が深く、両親が居ない代わりに他の親戚の人に預けられている。その人の姿を見てもイマイチ、ピンと来ないが、どうやら大企業の秘書らしく、生活費のみならず学費も出しているスゴい人だ。けれども、左近はそれ以外のことは分からないのだ。
家に居るときは、いつも日光を避けて暮らしている。ーー大谷さんもとい吉継さんと夕食を食べていた時のこと。入学式は両親の代わりに写真を撮りに行くと言われ、喜んでいた左近。
『やはり、うるさい……。』
『え!だって、嬉しいですよ!』
『だが、我はすぐに帰るぞ。』
ムスっとした表情で言われる。やはり、忙しいのだろう。そして、指を差しこう言う。
『左近、本当に友達が出来るよな?』
『えっ!?え……出来るんじゃないっすか?』
『……はぁ、心配よシンパイ。』
ため息を吐かれ心配だと言われてしまった。
『主は直ぐにキレる。そして、直ぐに喧嘩をする。我は入学式そうそう苦情の電話が入らないか胃が痛い』
『だから、今日は残しているんすね?』
『違うわ!!』
キッ!と睨まれ、机をひっくり返されそうなオーラが漂う吉継に左近はビクッと肩を震わせ、一歩下がった。
少し時が止まった後、指を下ろし楽しそうなイタズラを考え付いた様な顔になった。

『貴様が得意な賭けでもするか。ヒヒッ。』
これは、ヤバイ。左近はそう悟った。

ーーー
「……で、島氏は今日仲良くなった方を連れて来なければならないと。」
なんだか利用されている気持ちになる。くだらない事に巻き込まれてしまった。
「帰っても良いか……?」
帰りたい衝動を言葉にして出すと、左近は「帰らないでくださいよ!」と言った。
「せっかく、ここまで話せたんすから、吉継さんに見せたいんっすよ!」
「そんなの、口にして言えば良いだろう?」
「いや、じゃあせめてご飯だけでも!」
ギャアギャアと口論をしながら島氏は強い力で私を引っ張り、何故か扉の前まで来ていた。
(来てしまった……。)
色々と引きながらも、島氏の勝ち誇った顔を見た。嬉しそうだ。
ふと、美味しい料理のような香りがした。余計にお腹が空くから迷惑なのだが、左近は嬉しそうに言う。
「期待して吉継さんが用意してるんっすよ。たまにしか料理しない方なんですけどね、どれも上手いっすよ!」
「はあ……。」
久しぶりだ〜と言いながら鍵を開ける。私は今のうちに逃げるべきなのだが、その気は無くなり、島氏に言われるまま部屋に上がった。色々な不安を抱えながら。





入学式での話
top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -