いろいろしょーせつ | ナノ
「会えない友達が居るんですよね〜三成様、知らないですか?」
左近が不意に変なことを聞いてきた。
三成は怪訝そうな顔で左近の笑みを邪険する。
「知らん。左近の友人でマトモな奴など居ないだろうが。」
左近は大学途中から編入してきた。私と同じ学部だった為、必然的に交流が増え、今の私たちがある。
だが、左近はたまに可笑しな質問をしてくるのが悩みだ。どう答えたら良いかが分からないからだ。
『えっと、コレは先にお金を入れるんでしたっけ?』
『明日は祝日じゃ……ないんっすね。』
当たり前だ、と言うのを質問してくる。
今こそは回数が減ってきたが、今回は友人か。
私は探偵ではない、と一喝しようとした時、『この世界はまだ慣れないっす!』と笑っていたのを思い出した。

「左近、貴様は何者だ?」
「え。何言ってるんですか?三成様……。」
かなり左近は困惑している。
一応、付き合いの長い私なら分かる。これは、図星だ。
今までの可笑しな所を投げ掛ける。左近はもっと青ざめた顔になる。何だか面白く感じてきた。
「三成様なら大丈夫っすよね、誰にも言わないしょ?」
そう青ざめた笑顔で語り始めた。

その内容は、左近が戻って行った後も忘れられないものだ。

−−−
その日は−−今日はクリスマスだった。
俺は勝家と寂しく飲んで過ごす、という予定だった。外には雪が降り積もり、寒くなるのを天気予報で知っていた。だから、予め用意をしてた。
後は勝家が来るだけ!!
ウキウキしながら踊ったり、無駄な飾りを増やしてました。いや、勝家と遊ぶのが久し振り過ぎて、楽しむしかないってね。

勝家は幼馴染みで友達。
運動神経も良くって、薙刀の柴田とも呼ばれてた。薙刀で形を描くところが素晴らしいんっすすよ!
何故、薙刀で形を描けるのかって当たり前じゃないですか?俺は、少し違いますけど、あの世界では竜巻みたいな物を出せました。三成様!この世界から見たら凄くないですか?!
……話しますから!教科書で叩こうとしないで下さい!!

話を戻すと、勝家が中々来なかった。
電話は通じる。
メールでも話しているのに。

勝家は電話で、今着いたが扉が開かない、って開けて欲しいと頼まれた。俺は普通に扉を開ける。

ガチャ、と扉を開いてもマンションの通路には誰もいない。様々な光の粒が見えるだけだった。

「勝家、今どこにいる?」
「左近の部屋の前だ。****号室で合っているだろうか?」

勝家が言った****号室は、確かに左近の部屋だ。何度見ても勝家は左近の部屋の前、左近は何度開けても確認しても勝家が居ない。

「……左近。」
疲れたのか勝家は、とても低い声で俺の名前を呼んだ。
「どちらかが、パラレルワールドに飛ばされたのでは?」
パラレルワールド?初めて聞く言葉に左近は首を傾げた。知らないと言うと、勝家はより一層、焦っていた。
「パラレルワールドについて教えてくれたのは左近だ。」
「……。」
「夏休みの読書感想文で読んだ本で、私の好みに合う筈だと。」

俺は携帯から耳を離した。
そんな事、覚えてない。読書感想文?そんなもの、俺は書いてない。悪い夢だと思い、電話を切って、俺は眠りに就いた。

次の日、左近は勝家に電話を掛けた。
だが、『お使いの電話番号は現在使われて居りません。』と言われる。
周りを見渡しても何も変わってないように見える。結局、勝家のドッキリか悪い夢だったのか。左近はテレビの電源を入れた。

今の時間は、つまらない世界情勢のニュースを伝えていた。キッチンに向かい何か食べようとした時、国名と代表者の名前を聞き、俺は振り向いた。
場所は同じなのに全く違う国名だった。
それから、いくつか違いがある事に気付いた。左近嵐は出せなくなっていたし、大学の友達は顔こそ同じなのに名前が違っていた。
とにかくショックだった。

あのとき、電話を切らなければ、こんな事にはならなかったはず。

−−−
左近は悲しそうに話す。
慰めの言葉を言っても、左近にとっては意味を為さない。
前に吉継に言われた事をやろう。

「呑みに行くぞ。私の奢りだ。」
『呑みに行くか。ナニ、我の奢りよオゴリ。』
しかし、結局お酒を飲むのではなく、レストランの野菜ドリンクを飲み続けるだけだった。
ここで、誤算がある事に気付く。私と左近は未成年で呑みに行くことは出来ない。
左近は一気に元気が出てノリノリのようだ。前の世界では20歳越えだった為か。

「いや、近くのバイキングにする。」
「それでも、いいっす!!」
「だが、酒は呑むな?」

早速、私は携帯を取り出し検索をした。
(左近はいつか……いや、考えるのは止めておこう。)

結局、左近は私が20歳になる前に元の世界に戻って行った。
突然、掛かって来た電話。左近が焦っている様子が声色から読み取れた。
「行くのか?」
「でも、三成様と別れたくない……。」
「勝家とやらには会えるのだろ?私と左近が出会えたのは奇跡に等しい。だから−−」
「それはそうですけど!三成様に直接お別れの挨拶が出来なくってすみません!」
だから、電話したのか。思わずため息が出た。
「……言わなくて良い。別れを言ったら会えなくなるだろう?」
「また、会う予定なんですか?」
「あぁ、大学卒業したら会いに行ってやる。だから、泣くのを止めろ左近。」
これは嘘だ。
嘘を付きたくないが、こうしないと私の気持ちも整理できない。仲良くなった奴が突然、一人消えるのは、とても悲しい。
左近から応答がない内に電話が切れた。
電話が切れたことを伝える音を飽きるまで、また、左近から「嘘でした!」と着信があるのを信じて聞いていた。

やはり、私と左近は二度と会えない。
もしかすると、私が無理矢理、左近の話を聞かなければ何か変わっていたのかもしれない。
そう思うと、涙が頬を伝った。

次の日、左近をいくら捜しても居なかった。当たり前だ。左近は違う世界の人なのだから。
私と左近が、出会った場所に着く。
食堂の一角で、自動販売機と悪戦苦闘していたチャラそうな男。私は早く水を買いたく怪訝そうに声を掛けた。
『貴様、飲み物ですら買えないのか。私が買ってやる、お金を出せ。』
飲み物を渡した時、とても喜ばれ、名前を聞かれ名前を言った。
『ありがとうございます!三成様!』
『お……おい、貴様の名前は何だ。』
『島左近、左近と呼んでください!』
面倒な奴に好かれた、と三成はとても嫌そうな顔をした。が、数日後にはそれは無くなっていた。

三成は大学の外の広場に出る。
出会った季節とは真逆の冷たい風が頬を撫でた。



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