最近になって、榊遊矢に対し好意を持てるようになった。きっと、彼の近くにいればユートを感じられるからだ。ユートは一番の親友だ。ユートが消えた時は、転んで顔面に傷を負っても市を一周した。また、大雨警報たるものが発表されても、ヘリコプターや最近話題のド〇ーンかの様に大空に羽ばたき続けた。
俺はユートに執着している。出会った時からも、ユートが遊矢の中に溶け込んでしまっても、その事は変わりはしない。
〇*〇*〇*〇〇
「遊矢」
「黒咲……"また"なのか?」
「ああ、頼む。」
このやり取りは優に100回は越えている。この前、ユートに言われたから嘘ではない。
「黒咲はユートを中心に回ってるよな」
遊矢は少し呆れ顔だ。
隼は遊矢を引き留めれば、彼のマント部分を引っ張り歩き出した。
その時、遊矢はつまらなそうな顔をした。その表情を見て道路に飛び出して来たかの様に現れたのは、ユートだ。
−−−すまない、遊矢。
−−−別に大丈夫だよ。こうなったのも、きっと俺のせいだ。
−−−しかし……遊矢のお陰で
−−−その話は良いから。じゃ、また。
ユートはただ巻き込まれただけだ。初めは性格の悪い何者かと思っていたが、こうして話してみると案外良いやつだ。
謙虚で、真っ直ぐで、声は穏やかで、傍にいるだけで落ち着くし……いつの間にか"ユートは俺の中に居て良かった"と思うようになった。いや、姿が戻って誰も来ない場所に行きたい。
暗い願望にユートはその事に気付いているのだろうか?
ボンヤリと考えていれば、支えていた手が離れ遊矢はバランスを崩した。冷たい床に顔をぶつける。これは意外と痛いものである。それを見兼ねた黒咲は遊矢に手を差し出し、立ち上がらせ至る場所を払ってくれた。不意にひんやりする手で、頭も撫でられ遊矢は瞳を閉じた。
黒咲は、今の俺の立ち位置がユートだったら絶対に手荒な真似はしない。黒咲とユートの絆や愛は深い場所まで行っているのは、ユートの言葉を紡いでいるから分かる。
それは遊矢にとって、とても悲しかった。
ユートが遊矢の身体を乗っ取るため、瞳は銀白色になるが記憶はしっかりと残っている。
「ユート……」
「『隼、今日はちゃんとご飯を食べたのか?』」
「勿論だ。ユートは大丈夫なのか?」
「『遊矢がいる限りは大丈夫だと思う。』」
(俺は只の道具だったのか?)
瞳の色が赤く戻っていった。何故か深い赤色で流れ出す血のようだった。
「……俺は、『利用しないでくれ』……??」
「遊矢?ユート?」
明らかに戸惑う黒咲。ただ独りと見えない一人を見つめるしか無かった。
「『すまなかった、遊矢』」
「ユート……でも、さっきの言葉は……」
「『俺はユーゴやユーリの中では無く、遊矢−−キミの中に居られる事が出来て非常に良かったと思っている』」
半透明な遊矢にしか見えないユートが彼に覆い被さった。遊矢は慌てた様子だったから、隼にはどのような事が起きたのかは予想できた。
「……ユート」
「『隼も遊矢に対し好意を抱いている。だから、決して良いように使おうとは思って居ないはずだ。』」
「なっ……!!確かに、ユートと遊矢ふたりとも大事だが、そこまで言うのか!」
「『ほら、見ろ遊矢』」
「そうだね、ユート……あはは!!」
隼と遊矢は顔が赤く、ユートはただ微笑んでいた。
〇*〇*〇*〇〇
隼は実際、ふたりとも大好きです。
しかし、ユート>>>遊矢だと思います。
遊矢の場合は、ユート>>>>隼位で書きました。かなり嫉妬してます。
ユートは皆に愛されれば良い!と思って書いたのが長くなりました。
隼ユト前提ユト←ゆや←隼(ほぼ遊矢主観)って改めてみたら複雑でした。
キミが遠くなっていく