帰り道。
まだ、日が高く青空が広がっている。
しかし、俺の心はまだあの青空のように綺麗に成れなかった。今日もあの人に出会えなかったのだから。
目を細めたところに、ひとひらの花びらが頬に当たった。梅の花かと思い横を見れば、桜の木が植えてあったから桜の花びらであろう。
決して、太い幹ではなかった。
細長く今にも折れそうな、その木は精一杯に枝を伸ばし桜の花を咲かせている。
「まるで、三成様みたいだ。」
彼の独り言は風に消されていった。
自分の主に別れを告げて朽ちていった身。
しかし、気が付けば、もう一度似たような名前で同じような身体で、400年先の未来を生きていた。
苗字は違えど名前はそのままで、属性等は無くなっていたが戦う必要が無いお陰なんだと思った。
それでも、自分の主−−三成様には一目でも良いから会いたい。
三成様に会おうとして捜してから早6年経とうとしているが、情報は一切掴めなかった。
不意に賽子を振った。が、結果は良くないものであった。一瞬、苦く笑い自宅に戻るため歩き出した。
大通りに出た、その時−−信じられない光景が目に入った。
左近が居るのは明白に歩行者用道路である。しかし、走る車は歩行者用道路の上を走り左近に目掛けて来るではないか。
「ちょ……まっ……」
恐怖で足が動かない。
車は物凄いスピードで左近を捕らえたかのように走る、スピードを上げる。左近以外の歩行者は、唖然としていた。
「(ここまでかよ。)」
一回、三成様に散々斬られて亡くなっている左近は転生する前の事を思いだし、死を覚悟した。
キィイイイー!!!
キャアアアアア!!
自動車の音と悲鳴は耳を覆い、鼓膜を破るのではないかと思うぐらいに煩かった。
「どうして其処に居るんだ!!」
グイと誰かに手を引かれ、左近の意識は落ちた。
「(転生した先でも、こんな事ありかよ。)」
−−−
次に目が覚めた時は見知らぬ人の部屋であった。左近は布団から出ようとすると、静かに誰かの手に止められた。
「あ……。」
「今は安静にしていた方が賢明だ。」
「何だ。ここは勝家の家だったんだな。」
「……」
幼馴染みで大学生である勝家はコクンと首を縦に振った。
「また、助けられたな。」
「昔、助けられた。そのお礼をしているだけだ。」
「そうか。やっぱり、凄いな!勝家は!」
勝家がテレビを付けると、左近が巻き込まれそうになった事件についてのニュースが流れていた。
被害者は居ない、それだけで左近はホッとした。
「しかし、何で俺を病院に連れていかなかったんだ?」
「それは、……私にも分からない。」
気が動転していたのか?勝家のバカ力を想像しながら、左近は二度目の眠りに着いた。
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