苦戦は楽しくない
遊矢から貰った飾りを揺らしながら、琥珀はデュエルの練習をしていた。
「このフィールドもお菓子が一杯だね!僕のターン!」
明るい声が響く。
「私は、罠カードを伏せてターンエンド!」
相手は素良である。おもちゃのような可愛らしいカードを使う彼を羨ましく思う。
琥珀は全勝の腕の主では無いため、素良に対して苦戦していた。
琥珀のモンスターが一体破壊された。琥珀はその腕に乗っていた為に重力に従い落ちていく。が、目で周りを見渡しアクションカードを探す。
「やった!」
直ぐ様カードをディスクに置き、発動する。
「さすが!」
何とかカードを取り、ダメージは防いだ。しかし、素良から見れば琥珀の表情は余裕はない。それに琥珀は気づきはしない。
「……苦戦しているだけじゃ楽しくないよ?」
「……。」
琥珀は"苦戦している"という言葉に固まる。そう見えてしまうのか……琥珀は続けた。
−−−
「苦戦しながらでも僕に勝ったじゃん!琥珀も成長したんだね!」
「そう……かな?」
そうだ。琥珀は素良に勝った。事実はそうだけど、琥珀の中では何かが物足りない。楽しくない。
「なに暗い顔をしているんだよ!もう!」
急に腕を引かれ、されるがまま外に出た。
「……どうしたの?」
空はすっかり夕焼けだ。カラスが遠くから鳴いていて、幸せそうな夜を過ごそうとしている家族連れが歩いている。
「甘いお菓子のお店に連れてっているの!勿論、琥珀の奢りだけどね。」
少しだけ琥珀の気持ちを穏やかにさせた。
遊矢から貰った赤い飾りが夕日に映えた。
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