少女と髪止め
今日は柚子ちゃんとお出掛けしています。お母さんは姉貴(洋子さん)とお茶しに行っているみたいだし、遊矢は権現坂と運動(多分、デュエル)しに行っている。
ならば、柚子ちゃんと遊びに行こう!

「柚子ちゃん!」
インターフォンを押し、呼び掛ける。
「琥珀?!何か忘れ物をしたの?」
一切、連絡をせず柊家に押し掛けたのだから慌てるのも無理がない。少し悪いことをしたかな?と思っていたら、柚子ちゃんが扉を開け、笑顔で琥珀を向かい入れた。

「あれ?柚子ちゃん髪型違うね。」
いつもは二つ結びなのに、今日はポニーテールだ。髪止めもお花柄ので可愛らしい。
「ええ、たまには……。でも、中々上手く行かないわ。」
少し嬉しそうな顔をし、俯く。
「いやいや、上手い方だよ!とっても似合ってる!」
続けて、髪止めはどこで買ったのか?と聞いた。案の定、彼女は遊矢から貰った物だと言った。中々、センスあるな、とニヤリと笑うと柚子ちゃんはビクッと肩を震わせた。
「何か悪いことでも考えているの?」
「えっ?!違う違う。遊矢って中々センスあるな〜と思っただけ。」
「そう。琥珀ってたまに恐い笑い方をするから……。」
そうなのか?と疑問の目を向けると、彼女は頷いた。

「そういえば、いつもの髪止めもって重くないの?」
「そう……かしら?」
柚子ちゃんは琥珀の手のひらに、『いつもの髪止め』を乗せた。たかが髪止めだから、そこまでは重くはないだろう。しかし……。
「髪止めにしては重すぎない?」
「多分、頑丈に作られているせいね。」
これは、今まであんまり『重い』と感じてこなかったのか?
「これは自分で買ったの?」
「違うわ。ある日の朝、目覚めたら置いてあったの。」
サンタクロースか?!と思い、時期を訊いたが全然関係無かった。

頑丈な髪止めの謎は深まるばかりだった。