不安そうな少年から
榊遊矢……それは大事な私の幼馴染みだ。
私の方が少し歳上なので、遊矢は可愛い弟のように接してきた。
幼きながらも悲しみを堪え、強くなろうと努力する姿を近くで、時には遠くで見ていた。

そんなこんなで、遊勝さんが失踪してから3年が経った。そして、舞綱チャンピオンシップ決勝戦前。私や遊矢、柚子が残った。

今、私と遊矢は土手に居る。遊矢の誘いは断れないでしょ?
誘ったご本人様である遊矢は心配そうな顔をしている。過去を見るように、目線を左下に落としている。左下を見ても夕日の光を受けて、オレンジ色に見える草しか居ないよ。
「……どうしたの?」
「いや、ちょっと不安でさ。」
「ただデュエルするだけだよ?前向きに行こうよ!」
決して傷付け合うんじゃ無いんだし、と私が話した一言で遊矢の何かが曇った気がした。
「そうだ……よな。デュエルは……。ただ、ただ、楽しい……。」
涙が頬を伝う遊矢に琥珀は慌ててハンカチを差し出した。
「何かあったのよ?」
遊矢を方に寄せて、琥珀は励ますかのように微笑んだ。
「明日は楽しくやろうよ?何か複雑なルールだけど、上手く行くって!!」
「……こうして笑顔で誰かを幸せに出来る琥珀は凄いと俺は思う。」
優しさを含んだ声だが、何か違う気がした。遊矢のような、そうでは無いような。


−−−
赤い目を擦っては居るものの泣き止んだようだ。しかし、遊矢の泣き顔も可愛いな……柚子ちゃんに言ったら怒られるな。
「あ、琥珀にコレ上げるよ。いつもブーツ履いているからアクセントになるかなって。」

これは赤いリストバンドの足バージョンだ。
「へへ、遊矢ってば、お揃いのアクセサリーを身に付けて欲しいのかな?」
「違う!俺は……!」
「ごめん、ごめん、ムキにならないで。さあ帰ろ?」

笑顔で琥珀は遊矢に手を差し出した。
遊矢は琥珀の手をそっと握り、家路へ着いた。