七夕butterfly! 1
幼い頃は、英才教育をされている子でもそうでない子も誰でも……。

サンタクロースのように七夕には"願い事"を短冊に書いたのでは?

そう。

七夕には、琥珀と遊矢の両方の両親、柚子とそのお父さんが集まって、願い事を書いていた。


−−−数年前、幼い日の夜の話−−−

7月8日、そうノートに書いた際にふと琥珀は懐かしい出来事を思い出した。

昨日は七夕だったのか、と。
今年の昨日は、普通に学校に行き駅前の短冊にも琥珀は気付かなかった。
ただ、平凡に過ぎる時間であった。そう思えば、少しだけ悲しい気分になったのだ。

(遊矢くんは七夕を楽しみにしていたのにな)

しかし、環境は変化してしまった。確か昨日、出会った柚子も七夕については触れていなかった。

(柚子ちゃんはあの時、『また来年も!』と言っていたのに……。)

琥珀と遊矢達とは歳が離れており、学年は違うので出逢えないときは本当に会えない。
が、その場合は琥珀直々に遊矢達に突撃する。

琥珀は授業を聞き続けた……。

−−−
帰宅し、いつの間にか寝ていた琥珀は昔の記憶を夢に見た。

此処は榊家族の家だ。

母さんと洋子さんは久しぶりだと笑い合って、父さん三人は我が子自慢に花を咲かせている。

私たち三人は短冊に願い事を書いていた。

『遊矢くんは何を書いたの?』

『どーせ、デュエル強くなる!とかでしょ?』

『違うよ!柚子……!』

ぽかぽかと軽く肩を叩く。マッサージ程度の力加減だが、柚子はハリセンを取り出し渾身の一撃を食らわせた。

『じゃあ、願いは何なの?』

『ん〜……。』

それきり遊矢は黙り込んでしまったのだ。

何でだろう?と琥珀は思った。いつの間にか、への字に曲がった口元は少し開き(まぁいっか)と呟いた。

『柚子ちゃんの願い事は?』

『色々とあるわよ!』と10は越えるであろう短冊を見た。ここで口に出さなかったのは、柚子ちゃんが恥ずかしがってハリセンで叩くからだ。別にそれでも良い、と思ってしまう琥珀の本心は置いといた。

内容は、家事や遊勝塾の事や家族の事ばかりで優しさが滲み出ていた。

少し頬が紅い柚子を琥珀は撫でて『もう少し自分を大事にしなよ。』と言った。
遊矢も『俺に出来ることがあれば手伝うよ!』と両手をグーの形にして言った。

『遊矢だって……大事にしなよ?』

琥珀は紙を遊矢に突き付けた。

それは遊矢が書いた短冊で『強くなる!』と書いてある。

『それは……デュエルで……。』

『遊矢くんも柚子ちゃんも、凄いな〜!』

二人を抱き締める。琥珀より少し年下の可愛い二人。二人を弟妹のように愛おしく思った。

笹に短冊を飾り終わった頃、親組が戻ってきて色んな事を話した。ふと、短冊を見た洋子さんは琥珀を見て不思議そうな顔をした。

『琥珀、アンタの短冊は?』

『ほえ?あ、ああ〜姉貴すみませんっ!』

姉貴とは洋子さんの事で焦ると出てしまう言葉だ。別に洋子さんは妹分の娘である為かそう呼んでも琥珀を責めない。

短冊を取り出して飾った。

柚子は笑って言う。

『また、来年もやりたいね!』

遊矢も『やるに決まってる!』とバランスボールに乗った。危ないぞ。

−−−
微妙だがソコで目が覚めた。

「私が書いた願い事ってなんだっけ?」

眠りから覚めた身体は何故かスッキリしていて、階段を下り水を飲みに行く。

時間を確認すれば、既に22時を回る。余程、疲れていたのだろう。

そこで琥珀は駅に行こうと考え付いた。ちなみに、今日は両親が帰ってこない。近場だし寄ってみようと足を運んだ。



−−−
一旦、ここで区切ります。
2へと続きます。