05
帰り道。
日が暮れ街灯を頼りに家路に着く。
その時、不意に後ろを振り向けば人影が確かにある。

合歓木は勇気が無く−−それは当たり前だが−−走って逃げる事しかしてこなかった。

人影は逃げる合歓木を追い掛けはしない。その人影が合歓木を襲おうとしない限りは知らない振りをして帰ろう。

だが、しかし状況は変わった。
その日も同じように走って逃げようとしたが、肩を掴まれた。

『キミはこの世界に居るべきではない。』

『離して!』

馬鹿力を使い人影を押し、走り去ったのだ。
−−

「危ないって思ったからね。」

笑顔で隼に話す。

「どんな外見だったか?」

「う〜ん、暗かったからな。分からなかった。」

「そうか。」

アイツもこの世界に来れたのか。……いや、待て。アイツはもう行方を−−。

「何か思い当たるのは無いですかね?」

「……さあな。」

−−これからも、合歓木と帰ろう。
そうしなければ、崩れていってしまうのだから。

−−−
ようやく、今までと違う流れになったね!

そんな僕からのお土産を続けさせないってまだまだ慎重なまま。

合歓木は未だしも、リンに思い出されたら駄目なんじゃない?

どうする?

止める?止めない?それとも、思い切ってまたやり直す?

その権利があるのは、黒咲隼たった一人だよ。


合歓木を送り、家に帰ればいつものようにノートを開くのだが、今日はいつもと違った内容が印されていた。

やはり、これは只のノートでは無い。

「お前はどっちの味方なんだ。」

睨んだ先には何かがあったような。

−−−
ずっと黒咲くんにお世話になるのは申し訳ないな〜と合歓木は思う。

しかし、今日の帰り際−−合歓木の話を聞いた後に−−「ずっと送り続ける。」と言ってくれた。

「嬉しいのう……。」

話し掛けてからそんなに長く時は経ってはいないのだろうが、気にかけてくれる。

「何かお返しをしたいのう。」

だが、「返しは不要だ。」だの「お返しと言う名目で身体を貰おう」だの言われたらどうしようか。

まぁ後者は有り得ん。

ため息を吐きリンちゃん風に考えてみた。きっと彼女なら「ダメ元で行くのよ。」と言うだろう。

「全てはダメ元からか。」

「全て終わってからお返ししよう。」

今日もこうして眠りに落ちた。