19
冬のまだ空は明るい昼頃。
ネムは食欲が無く昼食を摂らずに、街を歩いていた。手にはバイトの広告紙を持ち、これから先をどうするか考えている。
本当は肌寒い冬場だから、家に閉じ籠って居たい。
しかし、いつまで素良の世話になるわけにもいかないし、素良は元々、隼の敵である限り不安は拭えない。もしかしたら……と考えれば考える程、嫌な気持ちで切りがなくなる。
何故かこの世界は、空き家が多く怖いのだが住んでも問題が起きないと教えてもらった。ネムは隼が住んでいる隣街の空き家に住んでいる。
「……高校生だから夜型のにしよ。」
怪しまれる訳にもいかない。ネムは公衆電話の受話器を手に取り連絡を取る。
素良に保護されてから朝目覚めたら日にちが元に戻っている経験を何度もしてきた。
だから、もし働いても元の日にちに戻り、また、探していくのだろうか。
内心、めんどくさい。が、誰かが壊さない限り無理らしい為、色んな職種を体験しようと考える。
と、ぼんやり歩いていれば少女とぶつかる。
「きゃっ!」
「……!!」
少女の鞄の中身が出てしまいネムは慌てて拾い、砂を払い、謝りつつ持ち主に渡す。
「大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です。って合歓木のお姉さん?」
「え……あ……。」
その少女はリンであった。
どうやら、合歓木のお姉さんと誤解しているようだ。
ネムは一瞬、黙った後に「いつも……妹がお世話になってます。」とお辞儀をした。
「色々あるけど、合歓木は面白い子で……。あの、お姉さんの名前は?」
ああ、昔の私は変わらないし、元々リンに面白い子だと思われていたのかとネムは苦笑いをした。
とりあえず、偽名を使いその場を凌ぐ。そして、あっちの合歓木に伝わらないように口止めをした。
頭が一杯一杯だったが、リンに嘘を突き通せた。少し悲しいが、こうするしか無かった。見付かれば何されるか分からないし、消えるかもしれない。
リンが立ち去った夕方の空は暗かった。
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