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「おい、合歓木。」

唐突に合歓木は黒咲に呼ばれ、誰も居ない物寂しい教室へ入っていった。

「どうしたんです?」

淡々と合歓木は黒咲に問う。
隼は合歓木が何か予定があるのだなと予想を経て、早めに終わらせようとして思ったのだが、そう上手くは行かなかったのだ。

目の前にはユートと良く似たユーリが立っていた。怒りよりかは興味深そうな顔をし笑っている。

「合歓木が"二人"居る訳ないじゃん!」

合歓木は驚きを隠せないようでユーリの後ろに隠れた。何でだ?という感情が隼を支配していく。

「(何故、こんな事になったんだ?)」

「貴様らアカデミアが造り上げた合歓木は、いつから機械的になった?」

教室の窓から冷たい風が三人を通り抜ける。隼はユーリと合歓木を睨みながら、十何分前の事を思い出していた。

−−−
「今日、合歓木と似た人を見付けた。」

「ソレハ何処で?」

見間違いなのでは?と合歓木は首を傾げ考えた。

「俺もそう思った。しかし、少し洋服や髪型が違う。」

「ならば、ただの似ている人なんでは?」

「……確かにな。そういえば、前に合歓木が言っていたストーカーはどうなった?」

この世界でも合歓木を狙うストーカーが居る。写真を撮られる音がいつも聞こえる、変な郵便物(手作りの菓子)が届いた等を遭ってきたが……。

「何とか大丈夫ですよん。」

「そうか。」

昔は懐いてくれた奴と似ている声、性格、容姿だから現実には"亡くなっている"という事実があっても"この世界では生きている。違う。"と錯覚してしまうのが、今のところの隼だ。

そして、何回も同じように世界を繰り返させられて来たが、合歓木を"ネム"と呼び、仲良く帰宅し看病までして貰った世界が今もなお色彩強く脳内に焼き付いている。

その落ち度がここに現れた。

「ん〜黒咲さんは……今日始めて私と話したんに、どうして私の事を詳しく知っているん?」

「……!!」

しまった、と隼は焦った。

「もしかして、私のストーカーは……。」

違う、という声が出なかった。
訂正するにしても難しい問題だ。

「リンやユーゴに聞いた。」

「…………」

ある程度、合歓木に関わりあるリンやユーゴから聞いたとするしかなかった。