14
幼き樹があった。
少し年下であったそれは、出会って直ぐに俺になついた。

幼き樹はずっと平和な世界にいるべきだったのに−−−。


幼き樹は自ら枯れることを望んだ。
−−−
「ページを書き出しているの?」
「……あぁ。いつまで経ってもお前が続きを書こうとしないからな。」
「当たり前じゃん。合歓木が開いて始めて変わることなんだから。」

呆れたように言われる。
暗い暗い部屋の中。黒咲はページを無理矢理足していた。
理由は判らない。後一歩という所で合歓木と黒咲は、ユーリの妨害によりまた、別れてしまった。そして、気付いた時にはまた繰り返していたのだ。

「ユーリは俺達を嬲るつもりでいるのか?」
「それは言い過ぎだよ、黒咲。」
−−−君たちは数少ないプロデューサーから救われたモノなんだよ?

人指し指を唇に当て静かに笑う。

「……ユーゴもリンもそうなのか?」

前回の世界ではあの二人は幸せに結ばれたままに終わった。黒咲は静かにそれをまた、そう俺達も成れるように望んでいる。しかし、このプロデューサーが用意した世界は中々上手く行かないようになっている。だから、前回のユーゴとリンは奇跡が起こったのに等しい。

「リンは先に捕まえて、無理矢理ユーゴが来ちゃったから、ユーリが詰め込んだだけだよ。一定期間までだけど、ある意味救われているね。」

ユーゴとリンはプロデューサーの目的の為に必要な存在だ。ユートと瑠璃の事を聞くと「さあね?」と省かれる。

いつもユートと瑠璃の話題を出すと素良は去る。触れられたくない何かがあるのか?

睨むと素良は振り返り、
「黒咲、今回はどんな世界を作るのか楽しみにしてるよ?」
と笑った。

「(残酷な世界がお好みか)」

哀れだ、俺はそっとノートを閉じた。