13
※アニメ軸でいう、舞綱チャンピオンシップの後。


首をカクンカクンとしながら彼は誰かを待っていた。幼馴染みでも友達でも無い。親でもなんでもない。彼−−遊矢は訪問者をただただ待っていた。
−−−
遊矢はLDSの廊下で捨てるのには大すぎる紙を拾った。誰がこれを落としたのかは分からず、丁寧な字で不思議な事が書かれていた。
《26時に遊矢の元へ来る。だから、よろしくお伝えろ。》
「は……?」
誰かが俺に伝えようとしたのか?
遊矢は首を傾げ、この口調はかなりストロングな奴だなと考えた。
まずは、沢渡、黒咲、赤馬とかか。女子では、セレナがこういう口調だったな。

「誰だろ?」
遊矢はその紙を丁寧に折り畳み、ポケットに閉まった。

今、ようやく26時前だ。あと、10秒で……しかし。
「(26時ピッタリに来るのか)」
「……。」
横目で時計を改めて見た。
ああ、26時になった……と思った瞬間に遊矢は眠りに着いた。


−−−


目を覚ますと眩しい日の光が遊矢を照らす。
だが、今いる空間に違和感があった。
「……ここはどこだ?」
部屋の中は殺風景で、何処か寂しそうに見えた。しかし、可愛らしい女の子の話し声と黒咲の声がした。

「隼にぃー!私ね、ユートにぃーを連れてきたの!」
「何、ユートをか?」
聞けばユートは今、強化合宿に言っているらしく居ないらしい。……お疲れ、ユート。

声をする方を見れば、黒咲と黒咲と髪型が少し似た女の子の二人が居た。あれが、妹の瑠璃か?と思ったが、あいにく瑠璃もユートに付いていったらしい。

近くにある机の上にはカードが散らばっており、ほぼ【鳥】をモチーフとしたカードばかりであった。

「私がユートにぃーを連れてくれば、私の力を信じるって言ったのは隼にぃーじゃん!」
「あぁ、俺は合歓木の約束を守る。」

この子は、合歓木と言うのか……確かにユートや柚子と同じ年齢であろう瑠璃より幼い。
そして、黒咲も穏やかに合歓木の髪を撫でている。

「(そうか。俺が呼んだ人は合歓木だったんだ。)」

二人のやり取りを見て微笑み、合歓木に話し掛けた。

「合歓木ちゃん。俺を呼んだのは、君だよね?」
「あ、ユートにぃー!」
「ユート……なのか?」
合歓木は俺に飛び付く。何か黒咲は嫌な顔をしているが、気にしない気にしない。

「いや、俺はユートじゃない。」
この空間は過去だ。
で、無ければ黒咲はここに居ない。
「スタンダード次元のユート−−遊矢だ。」
きっぱり言うと、合歓木は残念そうな顔をした。
「何言ってるの?!同じ次元のユートにぃーは持ってこれないから、他次元のそっくりさんを敢えて連れてきたのに〜。」

「「??!」」

黒咲と遊矢は顔を見合わせた。

「だから、言ったでしょ?!
私は、他次元の人間を連れて来れるんだって!ある人を守る為にこの力を使うから、連れてきた人を匿って欲しいの、隼にぃー……。」

−−−
その後の事はよく覚えてない。
起きたあと、俺は黒咲の元へ向かった。

「何だ。」
「……あのさ、合歓木っていう子知らないかな?昔に出会って……。」
その時、黒咲は俺に手を出そうとしたが、何故か俺はその手を力強く止めていた。
「ユート?」

ここでまた、意識が途切れた。

しかし、確かに黒咲は「合歓木は亡くなったんだ。」と言っていた。


(夢の中での真実)