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降りていった先にインターフォンを目の前に会話しているネムの姿が目に飛び込んで来た。

「これ、ロックの解除方法が分からないから開けられない。ごめん!」
《いやいや、気にしないでよ!勝手に開けたら怒られるんじゃない?》
「え、どうして気付いたん?水色ヘアーさん。」
《合歓木……後ろ。》

後ろ?、と思いながら振り向くと黒咲が立っていた。

「ネムとソイツとは知り合いなのか?!」

背筋が凍るほどの声が聞こえ、思いっきり肩を掴まれインターフォンに当たる。……但し、力加減はされているようで余り痛くは無いが怖い。

「パスパス!黒咲くん!」
「何を話していた?言えっ!」
「えっと、クリスマスとハロウィンは違うよ!と話してましてよん!」
正直に話してもハヤブヤが乗り移った彼は勢いを弱めない。
どうしようとなっていた時、インターフォンから《それは僕も関わってるよね?》と水色ヘアーさん−−素良が割入って来た。
その時、黒咲は正気に戻ったらしくドアのロックを解除した。
−−−
「黒咲、ダメだよ?合歓木をイジメじゃ〜。」
助けて貰ったお礼にネムが渡した飴を舐める素良が正直、羨ましい。ネムはソファーにうつ伏せ、機嫌が悪いのか俺に目を合わせようとしない。
「(コイツでさえ来なければ……!!)」
気持ちが沈んだせいで自然とソファーに座りながら頭を抱え込む形になっていたらしく、素良はニヤニヤしながら眺めていた。

不機嫌ながらネムは俺の家を気に入っている−−つまり、眠りに入った。すやすや眠るネムの乱れていた髪を簡単に整えてやる。

−−−
「良いムードの所、悪いんだけどさ……。」
このまま行けば、クリスマスを過ごす恋人たちの様になるのだが、今回は客人が居た。二人を見て素良は目を逸らしている。
「何だ?」
「合歓木は本当に変わらないよね。」
若草の目は合歓木を映す。
「ネムを止めたのはお前たちだろう?」
「そう。で、耐えに耐え切れず約束を破った。そうでしょ?」
素良は飴を舐め終わったらしい。
「また戻されるのか?」
「分からない。けど、悲しい事に合歓木は黒咲にまた矛盾を抱いて離れるよ?」
そう言い残し、素良は家から出ていった。

「(戻される?矛盾?)」
眠っていた合歓木がこの会話を聞いていたのも初めてである。

そして、また深い眠りに入り25日を迎えた。