09
※この話からユーゴとリンが互いに仲が悪い(口論している)描写がいくつか入ります※



無理矢理だったが予想した以上に合歓木は流されるままに俺の家に来た。

「今日は勉強など抜きして遊びません?!」

また家に来たらはしゃいでいる。
こいつは大の勉強嫌いなのか。それとも。

「遊ぶ前に聞きたいことがある。」

ソファーの上で跳び跳ねる合歓木は、弾みを利用して座る形で着地した。

その動きは華麗で素晴らしいが、今は誉めている場合ではない。

「ネム、」

「なに?遊んでくれないの。」

「お前何か隠しているな。」

上手く発表会を抜け出し会った人のことを騙そうとしても無駄だ。

合歓木が俺を睨む。鋭く、澄んだ目で。

「……隠してるよ。」

「じゃあ、素直に話せ。」

「今日、何日?」

「12月24日。」

早く隠していることを言え。
苛立っているかのように返事をしたが、ネムはシラッとした様子でいつものように返した。

「つまり、クリスマスイヴ。あげるん、受け取って。」

渡されたのは小さな箱。
綺麗にラッピングまでされており、開けようとリボンを取ろうとした。

が、俺もネムに渡すものがあることを思い出した。

「少し待ってろ。」

体を階段に向ける。

「捨てないでよん。」

心配そうなネムの声が響く。
歩きながら俺は返す。

「そんなことあるか。初めて縁の深い女性から貰ったものだ。」

「モテモテだから結構チョコとか貰ってんじゃん。」

「さっきの言葉を思い出せ。」と言い残し俺は階段を登った。

−−−
俺はあれをまた開いた。

「……(今は読むのを止めておこう)。」

俺がネムに対する態度を変えてからこれの中身は変わった。

ネムを始め、ユーゴ、リンにも変化が起きた。

『いちいち、あんたはうるさいわね!』
『それは、テメェもそうだろ?!』
ユーゴとリンは仲が悪かった。
今のようなバカカップル喧嘩ではなく。

また時は過ぎ寒い大雪の日。
『黒咲さん……いいや、黒咲ってそんな人だったんだ!許さない!』
悲しいことながらネムと俺も仲が割れていた。
また、ネムと俺は誰とも馴染めずに孤立をしていたのだ。

いつも皆がみんな、仲が割れ悪いせいか苛ついていた。
俺もその中の一人だ。

『いつも同じように合歓木と接してね?そうしないと、元の世界に戻るかもよ?』
『……分かった。そうしよう。』


以前に交わした約束を破ってしまった。
今はまだ大丈夫だろうが、急に壊れてしまって−−−。

ぐるぐると巡る思考に「ねえ!お客さん来てるよ!」というネムの声が聞こえた。

それを合図に黒咲は玄関まで降りていった。