掴めないけど、話せる。



セレナは始めて人をカードにしたのを、ずっと持っている。それは、強さを証明する為にか偶然なのかは分からないが、セレナはそのカードをいつも持っている。そして、時々デュエルディスクにセットをする。

「出てこい。」

カードにした人は、アカデミアの裏切り者らしい。確か私と同じ位の歳に見えたが、幼いながら反抗した結果がこれだ−−−といつも言い聞かせる。

「セレナ様、またまた。」

「お前は私の手下だ。少し位、暇潰し相手になれ。」

「いやいや、暇潰しっと申されても、デッキアドバイスですよね。私なんかに務まらない気がするのですが。」

淡々と語りながらもデッキを広げて私に見せる。どうやらメインデッキではないようだ。珍しいと思う。

「貴様はただ、話を聞いていれば良いんだ。独り言が響くから幽霊扱いをされて困っているからな。」

「私も幽霊です。」

こんな風にキッパリ返すと、少し考え込んで「そこではない……。」と黙る。いつも"アカデミアの裏切り者!"と言う割には態度は幾分、優しいもので、カードにされたのに私は退屈でも苦しくもない、実の妹と形は歪んでいるが過ごせている事が喜ばしい。

私は"セレナちゃん"と呼べる立場では無いから、"セレナ様"と呼んで敬語で話している。

少し不慣れだった行為も慣れ、誰よりもセレナの近くに居られる。人間の姿でこう有りたかった願望もある。

もし、私がセレナの姉だと知ったら、どう思うのだろうか。

いつもある疑問を胸に抱きながら、セレナの話をただ聞き頷いていれば、デッキを渡された。

「?」

「受け取れ。貴様もデュエリスト何だろう?私とデュエルした時に使っていたデッキを再現してみた。」

「あ、ありがとう……。」

嬉しくて手を伸ばす。だけど、それを受け取る事はまだ、出来ないのだった。