悲しみと同化



・公式設定を捏造してます
・全体的に話が重いです


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「柚子、大丈夫かな……。」
建物の影から心配そうな悠祈の声が響く。
「ねえ、僕と遊ぼうよ。」
そんな少年の声が聞こえた。きっと好戦的な舞網チャンピオンシップの出場者なのだろう。好戦的なのは苦手だが、ここは引けないし、少なくとも今日だけは答えは一つのみだ。
「分かりました。負けた方はペンジュラムカードを二枚払う、で良いですか?」
「ん〜……?君の説明がイマイチ分かりにくいけど、まあいっか!」
好戦的な人は珍しいデュエルディスクを腕に着けた。
何か違和感を感じる。
この人はイマイチ、顔が分からないし、デュエルディスクも何か不思議だ。……まあ私も顔が見えないのだろうから、こればかりはお互い様だ。

違和感と嫌な予感が積もりに積もっても、悠祈は引けなかった。


その日は、舞網チャンピオンシップの決勝戦で皆がみんな、高揚していた。それは遊矢もそうだった。
まだ空が明るい。
何とか公園の時計を見れば14時を針は指していた。時計を見て、まだ時間があると遊矢は思ったが、次の瞬間、心の余裕を無くした。

青空にカードがヒラヒラ舞い、遊矢の元へ来た。遊矢はそれを拾い絶句する。
「悠祈、何で?」

悠祈は柚子と一緒に行動したハズだった。しかし、その悠祈が今、カードの絵に描かれている。

泣きそうになる。
が、その気持ちを抑え、せめて柚子の安否だけはと歩き出した。


歩き出すと、脳裏には悠祈との思い出が浮かんでいた。デュエルをした事、俺とタックデュエルをした事、柚子と真澄が対戦した時、一緒に応援した事……いつの間にかゴーグルを付け俯いて歩いていれば、敵の罠に嵌まってしまった。

遊矢は建物の柱が倒されるのを察知すると直ぐ様、走り、飛び避けることが出来た。

その衝撃に悠祈は、何とも言えない空間で目を覚ます。まるで、自分の目が見えていないように思えて来たが、意識的に進んでみると遊矢によく似た人にぶつかった。

「あ、遊矢?」

そう言えば否定され、ユートという人だと分かった。

「なぜ、ここにいるんだ?」
「分からないです。遊矢と柚子は?」

慌てた様子で叫ぶ悠祈をユートは宥めた。

「俺たちは何も出来ない。」
「そう、なんですか。」
「ああ、本当だ。だが、遊矢はきっと大丈夫だ。信じるしかない。」
優しく力強く悠祈に言い聞かせた後、ユートの声が聞こえなくなった。

「ユート!?」

何も無くなった空間で悠祈はユートの帰りを待った。が、その間に悠祈の意識が消え去り、ユートが戻って来たときには静かに空気が流れていただけであった。