ハロウィンにて1



10月31日
ハロウィン

そんなのどうでも良かった。しかし、目の前に落ちている自称・魔法使いをどうにかしなければならない。

これは、夕暮れ時の帰り道。
部活をほったらかし、独りで帰っていたら落ちてきた。

『あ、あの……』

緑と赤の髪の少年は、様子がおかしかった。目は私のことを見ているのに、口は一切開かない。

『すみません……帰りますね』

めんどくさいのは、敢えて断る!無視する!これが、一番良い。
そう思い家路に戻ろうとした時、ようやく魔法使いは喋った。

「……運命の人だ!!」
『……??(ナニ言ってるの?』
「いや、失礼しました。私は榊遊矢と申します。ハロウィンと言うことで、もう一つの人間界に来ていたのですが……」
『長々しい説明は良いわ。運命ってなんなの?』

すると、魔法使いは口元をニヤリとして笑った。

「私の……俺の……相棒です」

この世界の何処かにある宝物を、一緒に捜す相棒。

『なんなの……それって……』

「さぁ……?貴女は、私のお父さんを…宝物を…捜すのを手伝うだけですよ」

『口調がおかしいわよ』

「!!………(泣)」

『もっと普通に話なさいよ』

「!!!!!!」

▽魔法使いは倒れた!!

(いじると中々面白いわ。)

その後もいじって、魔法使いを倒した。
魔法使いって案外怖くないわ。

「悠祈〜!!」

この女の子の声は……!

『誰ですか?』

「え、覚えていないの?」

『はい……』

「柚子、どうやら人違いじゃないか?」

倒した魔法使いが立ち上がった。
なんなの、運命だのなんだの言っていたくせに。
このピンクと赤っぽい髪色の子は柚子っていうのか。

「でも、遊矢?悠祈にそのまんまじゃない!!」

魔法使いは遊矢って言うのか。さっきは早口で聞き取れなかった……。
てっきり外国人かと……。

『たしかに名前は……悠祈ですが?』

内心は、早く帰りたい早く帰りたい早く帰りたい……!!と叫んでいる。

「ユートと同じ平行世界の人間とか?」

「いや……まず、ユートたちが平行世界の人とは……」

口論し始めたので家に帰りました。


なんなのよ、今日は……。
余りにも怖かったので全ての部屋の鍵を閉めてからベットの中に潜る。

ガタッガタガタ……!!

「……!!!」

酷い風だろうか……激しく窓が叩かれている。
余りにも大きな音だったので、悠祈はベッドから落ち転がるように窓から離れ物陰に隠れた。

パリーン☆!!

窓が直ぐに割れた??
そのとき、カーテンが風に揺れ踊った。

いや、ここ二階なんだけど……。
どうして、開けられるんだろう……。

「悠祈か……」

そう言いながら来たのは、遊矢でもない柚子でもない人……。
目線は私に向いていたので、ゆっくりと物陰から顔を出した。

『ユート……?』

「……!!」

月明かりのせいか、姿はよく見えなかったが、目が見開いたのは判った。

ガタガタ震える身体を抑えながら私は話した。

『夕方に……遊矢や柚子っていう人にあったときに話していたのがユート……。』

「柚子が……?まぁ、いい。俺はアイツらと同じ魔法使いではない……」

カツン、カツンと私に近づく。
足が体育座りしている私の前でとまり屈んだ。

「……吸血鬼だ」

そっと頬に触れるユートの手……。
触れた時に震えが止まったのが判った。

「柚子たちが悠祈を奪い合う理由はお前の血にある」

普通の家系だが……??
そんな特殊なのは聞いていない……。
お母さんもお父さんも、ごく普通の人だ。

なのに………………。

「とりあえず、俺たちの所へ来い」

ぎゅっと抱き締められてから、私の意識は無くなった。

遊矢たちが悠祈の家に着いた時にはもう遅かった。

「畜生……」
「ユートたちが先回りしたのね」

もしかしたら、前々から後ろを着いていたかもしれないけど。

遊矢と柚子は元居た世界に戻ったーーー。


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11月10日 加筆修正
2月5日 移転