シンクロ!



今日は暖かく過ごしやすい。
ユーゴは桜を見つめて居たので、悠祈は隣に座った。
リンはそれを見て「ほぼ同時ね」と他の人と話していた。
隣に悠祈が来た、と察したユーゴは言葉を紡ごうと口を開いた。
だが。
「あのっ!!」「おいっ!!」
今度は同時だった。
リンと話していた人は「仲が良いんやね。」と笑った。
それを見聞きしたユーゴは納得いかない!というような表情になる。

−−−
「ちくしょう、悠祈とどうして重なるんだ!」
「それはしょうがないでしょが。」
ユーゴはリンに。
「何でユーゴの奴と同時なんだ!」
「ユーゴの悪口言わない方が……。鏡なんだから。」
悠祈は他の人に。

そうまるで二人は鏡だった。
性別や髪型は違う。だが、二人は同時に話す−−それはまるで鏡だ。

「「……鏡?」」

鏡の中のどちらかはもう一方に対し同じ動きをする。そう、まるで操り人形のように。

ユーゴと悠祈は同時に手を合わせた。悠祈の体温が少しひんやりするのは気のせいか。
「……。」
「……。」
沈黙が流れる。
ユーゴはまた、言葉を紡いだ。
「あのっ!」
「……。」
「……………っ!」
そう、言葉を紡ぐふりをし、悠祈の発言を誘ったのだ。
悠祈の表情がユーゴのような表情から崩れていく。

「お前さ。」
悠祈とまともに会話するのは久しぶりに感じる。
「無理して俺に合わせる必要無いんじゃないのか?」
「真剣ね。」
「無理に鏡のようにならなくても!」
「私ね……ユーゴに憧れを抱いてた。性別違うけど。」
静かに暗く悠祈は語った。
ユーゴのような明るい人になりたかった、と。
それを聞いたユーゴは「そうか。」と呟いた。
「しかしな、悠祈、テメェも俺を同じように煩くなったら、リンの腹痛が増えるぜ。」
悠祈はリンの方を見た。
リンは「うんうん。」と頷く。
さっき悠祈と話していた人は「そんなに熱心なファンが居たんだな〜」という明るいノリで見ている。

「無理しなくって良かったんだね。」
「あぁ。こうして悠祈と話せる方が楽しい。」
「そっか、私も!」
ユーゴの心の中に悠祈の笑顔が焼き付いた。

−−−
しかし、数日後。
悠祈の癖は抜けなかった。
「あー!どうしてユーゴと同じ動きをしてしまうんだよ〜リンちゃん!」
「(まだ治らなそうね。)」

リンは優しく悠祈のサポートをしたとかしなかったとか。