さよならしたくないね。



ため息を吐く。
私だけエクシーズ次元から抜け出せなかった。まぁ素質が無いって言うことかな。

「あー!!ユートと黒咲兄行っちゃったよ。」

レジスタンスで生き残ったのは私含め三人。いくらデュエルが強い人たちが集まっても融合次元には勝てない事を思い知った。

「最悪だ、最悪!」

これからどうやって食べていけば良いんだ?
どうやって……。

融合次元の人がまだ残ってる。
私は一人だ。

……待てよ、誰かいる。

フードを被った男の子だ。

「どうしたの?貴方もひとり?」

融合次元の人ではないと示し、その男の子と行動を共にするようになった。
その子は強かった。
負けじと腕を磨く。

「しかしな〜強いのは良いけど。」

その子は本当に感情がない。

私は使えるから側に置かれているのかと思ってしまうが、それは考え過ぎか。

その子と私は今は一緒に居るが、いずれかは……離れ離れになる。

この子はまだ平和だと言われるスタンダード次元やシンクロ次元に飛べるか否か。

「……姉さん。」
「ん?どうしたの?」
「そのぬいぐるみを抱きながら何を考えてたの?」

ありゃ、顔にシワが寄ってたかな?

「あのね、君を平和な場所に連れてって上げたいんだ。」

それがその道具だよ、とこの子にぬいぐるみを渡した。驚いた表情をされる。ぬいぐるみはボロボロだ。それでも、形を留めているのは必死にこの子と守ってきたから。

優しい時間も束の間、遠くから敵襲だ。



「ここ……なら。」
ボロボロになりながらも、安全であろう場所まで走ってきた。
「ね、えさん。」
だが、私は手遅れだ。
傷が……。
クッと咳き込むと男の子は口を開いた。

その時、この場所は一番最悪な所だと気付く。

「エクシーズ次元の獲物は遂に僕たちの元へ来るようになったか。」

「……!!」

ここは融合次元のアジトだったのかと絶望した。
しかし、タイミングが訪れたと希望染みたものもあった。
今だ、この子をエクシーズ次元から出すんだ。私はもう一度力を振り絞り立ち上がった。

「私が足止めする。今のうちにぬいぐるみさんと安全な所へ、ね?」

静かにバレぬよう強制的に次元移動機能を稼働させる。

「……姉さん。」
「?」
「さよなら、したくない……!!」
「……っ、私も。」
感情が溢れてきた。
まだ、私はユートと黒咲兄妹と再会してない。
それよりもまだ、この子の名前すら知らない。
−−−知りたい、その為には、
「さよならしたくないね。」


その言葉を呟いたあとは何も覚えてない。

ただ、明るい何かと強い何かがあった。