廃墟と化した故郷を捨てる



※エクシーズ次元の夢主視点
※相変わらず暗い。
※舞綱チャンピオンシップ位の話



あの日は確か……お祭りだった。お祭りと花火大会が同時にあって、人混みが今までに増して酷かった。
悠祈はユートの手を思わず握った。
この日が始めてユートに触れた日であった。だけど、始めてで最後の行為であるのは言うまでも無い。

時は巡りに巡り、ユートたちの故郷は崩壊をした。政治も経済も全て、壊れてしまった。だが、悠祈も含めた彼ら一般市民には報道規制がされ本当の事は知らない。

「ねぇ、ユート。どうしてこうなったの?教えて?」

だから、悠祈はユートに聞いた。
ユートの表情は何かを知っているようであったからだ。そして、ユートの周りは情報の裏を知る者が多かったから何か分かると思った。でも、彼は口を開かずにただ一言二言行って悠祈の元から消えた。



その日の夜からだ。
悠祈はユートを待ち続けた。
消えたのは何かしらの用事があったからだ、そう思って居たかった。
だが、何日経っても帰ってこない。
手持ちの食料も底を尽きてきた。今の状態では、何か物を買うことも出来ない程に街や都市は閑散とし至る至る場所が破壊・崩壊をしていた。
ユートが住んでいた場所にも行ったが、やはり破壊がされていた。悠祈が居た街が唯一、被害が無かった田舎部だと老人から聞く。

「デュエルに勝ち続ければ、食料を貰える。」

「今の通貨はデュエルの勝敗なのか?」

「お前は何も知らない娘だな。」

なんかバカにされたようで少し腹が立った。この老人から食料を奪ってやろうか?と睨む。

「おやおや、ワシはもう戦えない。何でだと思うか?」

「腕を骨折し治ったが、医者が居ない元で自力で治したから骨が変な風にくっつき腕が上がらなくなったからか?」

今度こそ、バカにしたように老人は笑った。悠祈は自分が何バカな回答をしているんだろう、と考えたがその場のノリだったで済ませる。

「なんだ?その回答は。少しぐらい恥ずかしいと思わんか。まぁ良い……答えは、ただデュエルに負けてデッキを奪われたからだ。簡単だろ?」

もはや、元々のデュエルの意義が消え始めいる。
戦う事を決心した中で楽しい娯楽では無いんだなと悠祈は悟った。また、ユートも戦うから悠祈の前から消えたのかと悲しくなった。


また、何回も"win"という文字が表示される。何十回、何百回も表示されているから見慣れていた。
もう、悠祈の精神は限界を迎えた。だが、生きていたいから我慢をし続けた。

「……一緒に戦いませんか?」

誘いが来ても悠祈は無言で立ち去った。
悠祈の中では友達の名前や姿がもう思い出せない程に分からなくなった。ただ、生きたいから戦う。二人だと裏切られそうだから一人で生きる。そんな孤独な道を悠祈はただ、歩んでいった。


「(仲間なんてもう居ない。)」
廃墟と化した街で悠祈は綺麗な青空に目を細めた。


大切な人が消えてから何年経ったのか。だが、未だ悠祈は大切な人がどんな人だったか忘れている。前よりもっともっと思い出せなくなっていた。
彼女は今日も街を探索していた。

「ねぇ、君。強いでしょ?デュエルしない?」

この時に珍しく好戦的なヤツが現れたな、悠祈はただ思った。
即座に相手の解析をする。
相手は服がとても豪華で綺麗だ。水色の髪でキャンデーを舐めているから食料には困っていないのか。ただの金持ちか、勝てば良いことがありそうだな。

「ねえ、何か話してよ。」

デュエルディスクを構えデュエルの時だけ話してあげるよ、そう口パクで伝えると相手は微笑んで「良いね。でも、負けたらちゃんと話してね!」とそう囁いた。


「久しぶり、負けた。」

「いやいや、とても強かったよ?」

嘘だろ?
デュエルは互角に見えていた。
しかし、お互いが一歩も"引かない"状態を少年は作り演じ見せつけていたのだ。その事は、デュエルが終わった後に分かる。

「負けたから、何か払うよ。」

ここからが本当の賭けだ。
ここで勝者がデュエルディスクかデッキを求めれば、敗者の人生は終わる。お金ならまだ、安い方だ。

しかし、答えは意外なモノであった。

「君を貰おうかな?」

「……!!」

「君を持ち帰れば、プロフェッサーも喜びそうだし!何より、命令で『エクシーズ次元の強い少女を連れてこい。』って言われてたんだ!」

エクシーズ次元?
ここの世界の事か?

悠祈の疑問に満ちた目は少年に伝わったようで笑顔で頷いた。

「そうだよ。やっぱり、君は勘が良いね。」

「……。」

「ねえ、君の名前を教えてよ?これから、一緒に戦うかも知れないからさ?」

「七味 悠祈だ。あなたの名前もなんだ。」

「素良だよ。宜しくね?」

「素良か……。負けた以上、仕方ない。宜しく頼む。」

悠祈は素良に腕をとても強く引かれる。デュエルディスクが光出す。
一体、何処に連れて行かれるのか。

「(そういえば、私が貰われるんだっけ。何されるんだろう。)」

「大丈夫だよ。エクシーズ次元の人だって僕は周りの人には言わないから!プロフェッサーと僕以外は知らない!凄く良いことでしょ?!」

「秘密……か?」

「正解!あと、色んな事も教えてあげるね!」

この少年なら安心して良いのかと悠祈は敗北した暗い中で光を見出だせた気がした。


素良から色んな事を学んだ。
4つの次元についてやデッキについて。悠祈のデッキは、次第にエクシーズと融合の混合型となって行った。

故郷にいた時よりも強いデュエリストに出会ったが、あのときと同じく悠祈は良い成績を残した。その事を目に付けられる。

「悠祈と素良ならスタンダード次元の任務を行えるね?」

悠祈達はただ「イエス」と答えるしか無い。プロフェッサーの命令は絶対であるし、刃向かえば命は無いが反逆をした者がいるらしい。その少女を捕まえるのが今回の命令であった。


花火がうち上がる。
悠祈は舞綱チャンピオンシップの出場者として参加した事になった。
連戦に勝ち残った者たちが並ぶが緊張をして悠祈はよろめいた。

「危ない!」

だが、誰かが腕を掴んだため転ぶ事は無かった。

「ありがと……っ!!」

少女は直ぐに言葉を失った。
少年は震える身体、見開き震える瞳の少女を心配して「大丈夫か?」と声を掛けた。

「あなたの名前は何ですか?戦うかも知れないけど……。」

「……?俺の名前は榊遊矢、よろしくな!」

花火がまた打ち上がる。
悠祈はまだ、思い出せない大切な人と似ている人を見つけた。
だけど、悠祈と同じ故郷となると遊矢と名乗った人間を先に排除しなければならない。
素良も確か、この少年は強いんだよ!と語っていた。素良の足を引っ張らないように、遊矢から先に倒そう。

良く晴れた青空を廃墟となった街を思い出しながら目を細める。

「(ごめん。今の私の家は素良、アカデミア……融合次元なの。)」

ここから長く苦しい一日が始まった。

廃墟と化した故郷を捨てる
(俺はただ、悠祈をこの戦いに巻き込みたくなかったんだ。)


−−−素良に見事、洗脳された少女の話。

解説…ユートと悠祈は少し離れた場所で暮らしています。まぁ、引っ越しとかで別れてしまったのかと。そして、ユートは悠祈の事を気遣いエクシーズ次元に残していきましたが、そのせいで空いた心の隙間に素良くんが入り込みました。

上げたその日に一部、加筆修正を行いました。急いで書いた話なので誤字等ありましたらお知らせくださいませ。