08.専門学校学年一位と四位





―――なぜあんなところに家が?

一目で、細かく丁寧に造られたのがわかる小さな家。あまりにも不自然すぎて、姉は言葉が出ません。
かわりに、妹が見上げてきました。

「アイビス、あれが……?」

妹の問いかけに、姉は素直に同意出来ませんでした。

ちっぽけな家は、どうみても名所とは思えません。民宿の可能性は有り得ますが、あの大きさでは2、3人泊まれるかどうか。なにより、あんなに目立たない場所での経営は不可能でしょう。

怪しすぎて、本来なら近づくこともないような場所。

しかし、姉は妹の体力を心配していました。まだ子供、普段から鍛えている姉と比べても、妹に疲れが溜まってきているのが目に見えています。

「とりあえず、行ってみようか、イルイ」
「うん……」

姉妹は、おそるおそる歩を進めました。



表札もない玄関の前。
ある種の勇気を持って、姉が木目調の扉をノックしました。
こんこん。
小気味のいい音が跳ね返ってきます。

「こんにちはー、誰かいませ………」


ばたんっ!!


「よく来たな」

急激に扉が開かれた先に、負けん気の強そうな蒼髪の美人が悠々と立っていました。

…………………………。

あまりの反応の速さに、姉妹は彼女にかけるべき言葉すら浮かべられません。

しかし、姉は電撃にうたれたように、我に返りました。
「――あ、あんた! スレイじゃないか!!」
「ようやく気がついたか」

ふん、と美人―――スレイは、姉を鼻で笑います。

実はこの2人、同じ専門学校に通う同学年の学生です。

常に学年一位のスレイ、いつまでたっても四位の姉。

それのどこに接点があるのかといえば、なぜかスレイが一方的に姉を敵視しているからでした。

事あるごとに張り合い、そのたびに姉はスレイとの実力の差を見せつけられます。

スレイの実力は姉も認めていますが、なぜ目の敵にされるのか当の姉にもわかりません。

ただ確実なことは―――スレイが姉を一方的に嫌っているという事実です。





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