04.夫婦の提案
朝食の時間も終わりを告げ、姉妹が後片付けに取りかかる体勢をとりかけます。
しかし、今日の夫婦はほんの少しだけ違っていました。
「二人とも、話があるんだ」
聞いてくれないか? と夫が提案したので、姉妹は席に座り直します。
まさか、あの会話ではないだろうか。
心の片隅で危惧した姉でしたが、予想に反して新婚夫婦はなにやら楽しそうに笑みを浮かべていました。
夫は高らかに告げます。
「―――実は、ピクニックをしようと思うんだ。良ければ、二人もどうかな?」
……………え?
予想外の内容が姉の目を点にしました。
ピクニック。
確かに、姉と妹は二人揃って休日です。この誘いを断る理由はありません。
だから、昨日話し合っていたとすれば。
みるみるうちに、姉の肌が真っ赤に染まっていきました。
恥ずかしい。
勘ぐりすぎた自分が恥ずかしい。
「アイビス、もしかして嬉しくて照れてるの?」
「そんなに嬉しい反応だと、僕らも気が晴れるよ」
親切な好意が、ますます姉の顔を林檎のようにしてしまいます。
「アイビス?」
不思議に思った妹が呼びかけると、姉は反射条件的に返事をしました。
「だ、だだ大丈夫! ピクニックに行こうよイルイ!」
「え? う、うん…」
「じゃあ準備するから待ってて!」
姉は勢いよく立ち上がり、その反動で座っていた椅子を床へとダイブさせてしまいました。
されど眼中にないのか、姉は危なっかしい手つきで朝食の後片付けを行おうとしています。
なにやら様子のおかしい姉を妻が慌てて制止しました。
「ゆっくりでいいのよ。準備はもう私たちが済ませてるから、出かける用意だけお願いできるかしら?」
「え、あ……。わ、わかってるよ」
ようやく落ち着けたのか、姉の肩の力が抜けていきました。
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