03.バイト学生の憂鬱





朝食の時刻。
いつものように新婚側の招待を受けた姉妹は、振る舞われた食事をいただいていました。

シンプルながらも栄養に配慮が行き渡っている朝食が、食欲を大いに加速させます。
もちろん世話好きの妻の手作りです。

この朝食会は妻の好意から始まったのですが、現在の姉にとっては少々複雑にならざるを得ませんでした。

だけど、と姉は姿勢を整えます。

今は落ち着こう。
そして、二人に聞いてみよう。

リラックスしただけあり、姉の精神は幾分か安定しているようでした。

そんな姉の気負いなど露知らず、夫婦は朝食を満喫します。

「どう?」
「うん、おいしいよツグミ」
「ありがとフィリオ」

…………………………。

いつまでも新婚バカップルはさておき、妹はギクシャクとした違和感を感じていました。

彼女は昔から直感にすぐれています。
加え、長年共に暮らしているからこそ、姉の微妙な変化を読み取れたのでしょう。

ついに、妹の違和感が弾けました。

「……アイビス、大丈夫?」
「…え? あ、ああ、大丈夫だよ」
「……本当に?」
「うん、平気。ありがと、イルイ」

姉の心臓がびくりと震えましたが、なんとか表情には出ませんでした。

―――実は深夜に夫婦が何かを話し合っていた、と余計な心配事をネタバレするわけにもいきません。

姉は、あはは〜とごまかし笑いを浮かべ、先程よりも明るく振る舞って朝食を口に運び始めました。

純粋の象徴とも呼べる妹は、

「そう……?」

疑問符を頭に掲げつつも、敬愛する姉の言葉を信用して食事に戻りました。

助かった、と姉はひとまず安心しました。

余計な情報を与えて不安にはさせたくなかったからです。

話はこの後。

姉は深く、呼吸を整え直しました。




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