01.真夜中の出来事
スパロボ的童話パロ
『ヘンゼルとグレーテル』
〜チームTD+ゲスト編〜
いつかの時代。
ある森の中に、二つの家族が暮らしていました。
片方は新婚夫婦。
もう片方には姉妹が住んでいます。
森の中のお隣同士というのは交流も密接になりやすく、また周囲はがら空きなため、二つの家族の仲は親密なものとなっていました。
そんなある日のことです。
むくり。
満月が輝いている夜、姉妹側の家の寝室で、姉がゆったりと身を起こしました。
深夜に起きてしまったため、姉はしばらくぼんやりとしていました。まだ寝ぼけているのか、焦点も定まっていません。
やがて姉は意識の大半を占めている眠気に従い、もう一度寝ようと毛布を手繰り寄せ―――
「………………?」
カーテンの向こう側から漏れる、隣家の灯りが姉の目を覚まさせました。
姉は不思議に思い、まだ温かなベッドの誘惑をはねのけて外へ出ました。
静かな夜。
静寂を崩さないよう慎重に、姉はそろそろと灯火に歩み寄ります。
妙な予感と好奇心。
これが姉を突き動かしていました。
隣家の窓側にたどり着いた姉は、光の向こう側から会話らしき響きを耳にしました。
こんな深夜に、何かの会議を行っているのだろうか?
好奇心が働いた結果、彼女は壁に張り付いて意識を集中させました。
「ねえフィリオ。アイビスとイルイ……かし……?」
「ああ……」
聞き慣れた新婚夫婦の声。
その会話に、彼女たち姉妹の名が列挙されていました。
自分と妹がどうしたのだろう?
密かに驚いた姉の思考が疑問で一杯になっていきます。
深夜に話す話題と言えば、何らかの重要な話題に違いありません。
更なる情報を求めて、姉は一層聞き耳をたてました。
「……特にアイビス……」
「……がない……」
「……はもう……?」
「なんとか……」
「………………、よく………ね…」
「僕の頼み……、ツグミ……わかる…?」
これ以上何も理解出来ないと踏んだ姉は、表情を曇らせて壁から離れます。
そして腕組みをし、先ほどの会話に自己解釈を付け加えていきました。
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