04.ご都合主義的行き倒れ






そして一人になってから、十分が経とうとした頃です。

「あら……?」

蒼ずきん少女は、道の先に何かが倒れているのを視界に納めました。

「あれ、何かしら……?」

不思議に思った蒼ずきん少女がおそるおそる近づいたその時。

……ぐうぅぅぅぅ〜………。

実に間抜けな音が森の中に響いていきました。

目が点になった蒼ずきん少女の耳に、また音が届けられます。

「は……腹減った……」

今度はかすれた声です。空腹でたまらないのだろうと察することができました。

これは大変、と蒼ずきん少女が駆け寄ります。

しかし―――。

「……え!?」

蒼ずきん少女はあと数歩、というところで踏みとどまりました。

段々はっきりとなった、倒れたその姿に驚いたからです。

―――茶色の犬耳、茶色の尻尾。特徴的な服装に紫色の髪。

紛れもなく、あの野犬たちが言っていた狼に間違いありませんでした。

「はら………へったぁ……」

またも、同情を誘うかのような声がまた聴こえてきます。

見た目からは危険はなさそうです。というか、間抜けです。

蒼ずきん少女は、なんだか可哀想になってきてしまいました。

「だ、大丈夫……?」
「………め……し…ぃ……」

呼びかけても、ますますか細くなっていく声。

どうしよう、と蒼ずきん少女は視線をさまよわせ……。

「………………あ」

蒼ずきん少女の右手には、食べ物の詰まった籠がかけられていました。

でも、と蒼ずきん少女は表情を曇らせてしまいます。

そう、これは末の妹とお茶会を楽しむために持ってきたものです。

それに、飢えて死にかけているのは狼。

助けていいのか、見殺しにしていいのか。

「………………ぃ……」

蒼ずきん少女は迷いに迷い――――





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