02.「今更だけど誰が配役を決めたんだろうな?」「さあ?」
無表情のまま、赤ずきんちゃんは道を進み続けます。
とてとて。とてとて。
ぶっちゃけ可愛いです。般若のような鬼のペイントが刻まれた赤ずきんはともかく。
「あら……?」
そんな彼女が行き着いた先は、なぜか花畑でした。
「なんてキレイな花畑。きっとレモンさんも喜ぶでしょう」
かなり棒読みでしたが、赤ずきんちゃんはきれいな花を摘み始めました。
ぶちぶち。ぶちぶち。
「女は義理堅く……義理、堅い……?」
無慈悲な光景と化していましたが、それでも赤ずきんちゃんの可愛さは保たれていました。
時間が経ち、赤ずきんちゃんの手には不器用なりの花束が完成していました。
「さて、お使いの続きを……?」
何かに気がついたように、赤ずきんちゃんはきょろきょろと辺りを見回します。
そして、赤ずきんちゃんの瞳が不安げに揺れていきました。
「……ここは、どこですの……?」
うるうる。
某チワワのCMのように、赤ずきんちゃんの瞳に涙が溜まります。
と、そこへ。
「………………………道に迷ったのか」
タイミングよく、誰かが赤ずきんちゃんに語り掛けました。
「だれ、ですの?」
「狼だ」
……………………。
身も蓋もない即答。
沈黙が訪れてしまいました。
……がさがさ。
やがて沈黙に耐えきれなくなったのか、木陰の中から声の主が姿を見せます。
一言で表すと、沈着冷静な熱血漢っぽい狼です。
ちなみに彼の名誉のために補足すると、ちゃんと服は着ています。ただ、茶色い犬耳と尻尾がぴょこんと生えていましたが。
「……かっこいい、ですの」
うっとりとしている赤ずきんちゃんの言葉に、狼は無言です。それどころか気まずそうに、彼女から目を逸らしています。ご愁傷様。
「…………こっちだ。ついてこい」
そそくさと案内を始めた狼に、赤ずきんちゃんは嬉しそうについていきました。
[back] [next]