03






「で、何があったのかしら?」

母親の問いに、姉が答える。

「この子、夢を見て泣いていたの」

空白の間。

「……め、珍しいこともあるのねぇ……」

母親は本心から呆気にとられていた。

……確かに無口で感情を出しにくい性格なのは自覚していますけど……。

少女は密かに、しゅんと落ち込む。

「お母さん、この子が落ち込んでるわ」

そんな言い方ないでしょうに、と姉は母親を追及する。

姉なりの配慮だというのは少女には見透かせた。

しかしこれではどちらが母なのかわかったものではないが。

「そうね、ごめんね」

と、母親は少女に近づき、抱きしめた。

………………。

少女は温もりに身を委ね、目を閉じる。

温かい。懐かしい。



一緒にいたい。



「…………?」

不意に浮かんできた言葉に対し、少女は内心で疑問に思った。

また、だ。
誰の言葉、ですの?

「どうしたの? 具合悪いのかしら?」

愛娘と呼称するだけあって、母親はあたふたと動揺した。熱があるかどうか調べたりしている。

「……大丈夫、ですの」

お腹が減っただけ、と少女が微笑でその場を誤魔化そうとし、

「……何があった」

低い声が、三人を振り向かせた。





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