「で、何があったのかしら?」
母親の問いに、姉が答える。
「この子、夢を見て泣いていたの」
空白の間。
「……め、珍しいこともあるのねぇ……」
母親は本心から呆気にとられていた。
……確かに無口で感情を出しにくい性格なのは自覚していますけど……。
少女は密かに、しゅんと落ち込む。
「お母さん、この子が落ち込んでるわ」
そんな言い方ないでしょうに、と姉は母親を追及する。
姉なりの配慮だというのは少女には見透かせた。
しかしこれではどちらが母なのかわかったものではないが。
「そうね、ごめんね」
と、母親は少女に近づき、抱きしめた。
………………。
少女は温もりに身を委ね、目を閉じる。
温かい。懐かしい。
一緒にいたい。
「…………?」
不意に浮かんできた言葉に対し、少女は内心で疑問に思った。
また、だ。
誰の言葉、ですの?
「どうしたの? 具合悪いのかしら?」
愛娘と呼称するだけあって、母親はあたふたと動揺した。熱があるかどうか調べたりしている。
「……大丈夫、ですの」
お腹が減っただけ、と少女が微笑でその場を誤魔化そうとし、
「……何があった」
低い声が、三人を振り向かせた。
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