01
………………。
水面から浮き上がる感触と共に、少女はむくりと身を起こした。
…………夢……。
まだ十代初期ともとれる少女は、夢を思い返すように目を瞑る。
「……変な夢、ですの」
ぽつりと、少女は呟く。
ここ最近、繰り返し見る夢。
決まって女の子が出てくるのはもう既に理解しているというのに、何故何度となく夢に登場するのか。
どうしてだろう、と少女が寝ぼけ眼のままぼんやり考えていると、
「……朝から感慨にふけるなんて、何かあったのかしら?」
ゆったりとしていながら、涼やかな口調が少女の目を覚まさせた。
「あ、お姉ちゃん」
「あ、じゃないわよ。もう昼よ?」
まったく、と姉から仕方ないわねというような呆れた溜め息が漏れる。
…………昼?
少女は生活のリズムが狂っていたことに首を傾げた。まさか、そこまで寝ていたなんて。
そういえば、と少女は窓から注いでくる光と空の眩しさに改めて気がついた。
「とにかく休みだからってぐうたらしないの……って、あら?」
少女を急かしかけた姉は、変化に気がついた。
「貴女、もしかして泣いていたの……?」
……え?
姉の指摘に少々驚いた少女は、ベッドのそばに置いてある小さな鏡に映る自分を観察した。
―――微かに、紅くなった瞳。
―――涙の跡が残っている、自分の顔。
これは、何……?
少女は、ひたすら戸惑った。
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