07




「起きなさいリンク!!」



海底の底から無理矢理に水面まで浮上させられた感覚が俺を襲った。非常事態に頭が混乱しかけ、耳に慣れた声に眉根を潜める。

「……う」

目の奥がくらくらとするが、イリアの怒気にやむなく目が覚める。眠気が名残惜しい。

「寝ぼけてる暇があるなら時間を確かめなさい!」

が、イリアは眠気すら一喝した。

「何言って…って嘘だろ」

渋々と窓の向こうの景色を見て絶句する。朝の爽やかさはどこへやら、直上に居座った太陽が大地を、森を、世界を見下ろしていた。

「まったく……もう昼よ?」

ありえない。俺の体内時計は正確な時間を刻むことで自信があったのだが。

しばし呆然となる俺に、仕方ないというような溜め息が降ってくる。

「……また夢を視てたのね」
「夢?」

視線を幼なじみに照準して言葉の真意を問う。
イリアは怒気を引っ込め、懐かしい思い出を語るように翠色の瞳を細めた。

「あなた、夢を視たらいつもこうじゃない。うなされたり、にやけたりして。それで毎回のように寝坊したり、ね」

……。そうだっただろうか。

「……覚えてない」
「あらそう? また『さようなら』、『月が落ちる』、『友達を探してる』……なんて言ってたけど」

………。
……………。
………………………?

「そんな顔しないの。さっさとお昼ご飯食べて、子供たちと遊んであげて」
「…ああ、わかった……」

苦い何かが引っ掛かったが、俺は素直にイリアの指示に従った。





……夢を視たのは久しぶりだ。
内容は覚えていない。

覚えていない、が……

ただ、余韻だけが残っている。



始まる、と。




End.

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