02




白亜の神殿。
古代より現代にまで伝承に謳われた時を司る領域の最奥に、一人立っている。

眼前には勇者の証であり時の橋渡しの鍵でもあった退魔の剣が台座に突き立てられており、滑らかな銀の刀身が光に濡れて一層輝いている。

その姿はまるで静かに微睡んでいるようで。

何度も繰り返してきた時の奔流を渡る旅も、特異点を封印したことで終焉を迎えたと―――元の世界に帰ってきたのだと告げる何よりの証明だった。

ふわり、と星屑の燐光が視界に躍った。

『   、もう立派な勇者なんだよね。 ビぃ、安心して森に帰れるよ……』

ステンドグラス越しの一条の光に溶ける『友』が鈴のように澄んだ透明な音色を耳元に響かせた。微かな、しかしはっきりと声音が届く。

ああ、な  とも別れる時が来たのか。
(………………“   ”?)

故郷を出てからずっと一緒にいて、それは永遠に変わらないと信じていたにも関わらず、呼び止める思考は不思議と浮かばなかった。いや、共に時を旅した『友』だからこそ交わす言の葉を不要のものとした。

次第に小さくなる燐光を穏やかに見送る。

『……大好きだヨ、   』

二対の翅が宙に舞い、光の粉が僅かな残滓を残して去っていった。

―――ありがとう。
(……………………わからない)

積み重ねた思い出が『友』の存在の大きさを自覚させ、言葉にならない感謝が心に何度も何度も反響する。

「…………」

しかし、これで終わりではない。
澄んだ空気を取り込み、ゆっくりと吐き出す。果たすべき役割……いや、交わした約束がまだ残っている。

もう一度だけ銀光を反射する剣を見据えた。定められた未来は再び不透明になった。これから先の未来は、自分自身が自らの手で選び掴んでいくこと。

神殿の最奥に背を翻す。
俺はしっかりとした足取りで石畳の上に見えない足跡を刻み付け、扉の向こうに広がる未来に進んでいく。

さあ、今度、 は 約、束を 果た しに、 行   こ う     ――― ――   ―    ―    。
(…………………………。)






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