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―――浮遊感が失われると同時に、ブーツ越しに堅い感触。

暖かな水の中をたゆたう感覚が消失していた。閉じた瞼越しに改めて世界を認識する。それまで空気に溶けていた僅かな違和感も霧散している。

終わったんだ。
――――全てが、終わった。
(………なにが……終わった……?)

半分は夢心地から覚めたように現実感がない。しかしあれは間違いなく確かにあった“未来”の世界だった。

意識した途端、塞き止められていた間欠泉が噴き出すように次々と疑問が脳裏に浮かび上がる。

彼らは無事だろうか。
課せられた役目を果たした後、各々の家族や友人の元へ帰ることができたのだろうか。

―――そして彼女は、どうしているのだろうか。
(………それは、誰だ………?)

本来であれば、過去から未来を観測することは不可能である。未来から過去を振り返ることしかできないように、時間は現在にしか繋がらない。

しかし、未来の世界で成し遂げた事実は確かに存在した。

少なくとも、あの世界の行く末は元凶を退けたことで安定に向かうだろう。これから国の要になるであろう彼女も一人ではない。きっと、彼らが力になってくれる。

俺は旅の最果てに辿り着いた世界を認識させようと、閉じていた瞼を緩慢に開く。本来の肉体に遡ったせいか視点が低い。特有の長い耳に開けたピアスの跡も無くなっている。

しかし何もかもが無に帰したわけではない。蓄積された経験が、得られた希望が、心中の真芯に据えられていた。

…………帰ってきた。
(……………ここは、どこだ…………)

静謐な空間を穏やかな眼差しで受け止める。


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