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弱肉強食というのは世の理だ。肉食の狼と草食の山羊、明らかに立場ははっきりしており、俺は山羊たちが蜘蛛の子を散らすように逃げる様を幻視していた。

が、何事にも例外は存在する。

彼らは主人のファドが大好きである。つれない態度を取るのも、時折牧場を脱走しようとするのも、ファドに構ってもらいたい気持ちの裏返しなのだ。

そんな背景を持つ彼らだ、普段はのんびりとしていてもファドを守るために全力で俺を排除するべく攻勢に回った。

そして俺も彼らの気持ちを痛い程理解できるがゆえに反撃することすらできない。

『おいおい……』

思わず呟いてしまったのも無理はない。

山羊たちは攻撃班、守備班、奇襲班という枠組みを作り上げていた。プロ顔負けのチームワークに背筋が凍る思いである。下手をしたらハイラル城下町の一般兵士よりも強いんじゃないか?

ちなみに攻撃班は俺を中心として円形で取り囲み、奇襲班は回避した先を予測して目を光らせている。

一方、守備班は山羊たちの小屋で作業中のファドを護衛するように入口の前で扇形に整列し、決して侵入させまいと身構えていた。これではミドナの軍隊と呟いた意見も理解できよう。だが山羊なのだ。残念なことに。

「一旦逃げる、ぞっ!」
『言わ、れなくった、って!』

若草を蹴りちらす突撃からの波状攻撃に耐え、じりじりと牧場の入り口への道を切り開くように神経を磨り減らす。まだまだ戦いは続きそうだった。






……正直、アイツらが俺を『俺』とわかってやっていたならば、ちょっとだけ肩を落としたくなったのは相棒にも内緒だ。


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