02
不本意ながら勇者の資格を持つ俺だが内心は勇者としてではなく一個人の意志でハイラルの危機を救うべく奔走している。
当面の目標は影の世界を支配した偽物の王ザントを倒すことである。
―――しかし神によって一度分かたれた影の世界に侵入する方法は容易いはずがない。
唯一の手段は『陰りの鏡』を用いることなのだが……綺麗に四分割されていた時は唖然となったね。ミドナ曰く「影の長しか鏡は割れないのに無理矢理割った」とのことから、どんな嫌がらせなんだと憤慨した。まあ敵同士だからこそ足止めは定石だが実際やられると腹立たしいことこの上ない。
そんなわけで各地に散った『陰りの鏡』の手がかりを得るためには情報が必要不可欠である。そして情報を得るには時間の経過が大きい。
何しろ『陰りの鏡』である。
ハイラルの伝承にすら残らなかった遺物そのものを一から探すのは俺も流石に途方にくれた。
幸いにしてハイラルの異変を察知した仲間によって微々たる進展はある、のだが……やはり時間が一番ネックだ。
俺は剣士としての修練を研鑽はしたが、その筋の専門家ではない。やはり体を資本にして動くのが俺の役目である。
加えて数日後までは情報がまとまらないという話が上がり「それまでは休養しておきな」とテルマさんに念を押されたので少々好意に甘えて故郷に足を休めにきた―――のだが。
ここで更に話を若干遡る。
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