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彼らから立ち上る静かな闘気が、天に向かって揺らめいているような錯覚を受けた。

俺としては嫌な部類に値する特技ではあるが、数えるのも億劫な程には幾度となく死線を掻い潜っている経験から、この突発的に発生した不利な状況を解決できるだろうと焦りながらも比較的簡単に考えていた。既に過去形であるが。

俺は全く予期しなかった現状に、心中で冷や汗を滝のように流している状態である。

向けられるのは攻撃に次ぐ攻撃。
いくらそれなりの修行を積んだ剣士といっても、四方から襲い来る見事なまでの息の合う連携にはそうそうお目にかかれない。

突撃につぐ突撃の雪崩を、勘と本能と第六感という運任せに等しい感覚で避け続けられている現状が奇跡のようなものだ。

繰り返すが、俺にとっては『予期できなかった不測の事態』である。ゆえに反抗の一手が思い付かない。というか無理だ。

だからこそ、かわしては逃げる、避けては逃げる、跳ねては逃げる。逃走しか選択肢がない。

一方的な攻撃だ。

……だが、彼らは悪くない。

使命感に燃えた瞳が俺を射抜く。申し訳ないというか罪悪感の坩堝に落とされるというか、とにかく俺の精神は謝意で一杯だった。

「なあリンク。……奴らは軍隊なのか?」
『……山羊だ』

背に跨がるミドナが恐らく表情筋をひきつらせながらある種の戦慄を交えた問いを発するが、一拍の間を置いて俺は答えた。

そう、間違いなく山羊だ。誰が何と言おうとトアル村の牧場に放牧されている草食系の山羊なのだ。

特徴的な丸い角を全面に押し出し、狼を撃退せんとする闘志が俺たちを圧迫していた。つーかどうしてこうなった。ふと脳裏の片隅に回想がよぎった。




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