02





俺の名前は『リンク』。
トアル村の牧童であり、勇気のトライフォースを宿した『光の勇者』でもあり、

ゼルダ姫の知り合いでもあった。

数ヶ月前、俺はハイラルの危機を救った。
光の勇者として、ハイラルに住む一個人として。

その旅の最中、俺はゼルダ姫と出会った。

突然の襲撃。
さらわれたイリアとコリン。
二人の行方を追い、光を浸食する影の領域に引きずり込まれ。
神に選ばれし力によって狼に変化し、その急激な負荷に耐えられず気絶。

気がつけば見知らぬ牢屋で目覚めた。

狼に変化したことに戸惑っていた俺は、影の者―――『相棒』に助けられた。

流れに乗せられて牢屋を脱出し、変わり果てたハイラル城を目の当たりにし。

―――黒装束を纏い、囚われたゼルダ姫と顔を合わせた、というわけだ。



まったくもって数奇な出会いだったと思う。



その後も彼女の手助けを借り、かろうじて魔王に勝利して……。

………………………………。

平凡な生活に戻ったんだよな?

そう、俺は勇者の役目を終えてからトアル村へ帰還した。
理由もなく長い旅に出ていた俺を、トアル村の人々は温かく迎え入れてくれた。

こうして俺は、再び牧童としての生活を始めた。

……とはいえ、ハイラル城が崩れ落ちた事態に、しばらく国中大騒ぎだった。

ゼルダ姫のカリスマと指揮能力により体裁だけは復旧したものの、ハイラル城再建には長期に渡る時間が必要。

ハイラル城陥落の原因に一枚噛んでいた俺は仕事の傍ら、時々ゼルダ姫の手伝いをしていた。

こっそりと顔合わせをしていたゼルダ姫との面識も、非公式ながら当然深まっていった。
しかし、ハイラル城の修復が順調に進む一方では―――当然、直接会う機会も制限されていく。

そこで始まったのが手紙のやりとりだ。

何かあれば手紙を交わし、返事をする。
最初こそは事務連絡のような内容が飛び交っていたが、現在は村の様子やお互いについて語ることが多い。立場上はこの国の王女と村の牧童、奇妙な組み合わせだとつくづく思う。




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