05





やがて二人が終点の中央、『時空の扉』の前に立つ。ついに来てしまった瞬間であり、待ち望んだ光景でもある。マスターハンドの疲労が濃いのか、蒼い輝きを放つ膜が細波を描くように揺らぎ始めている。急いだほうがよさそうだ。

「じゃあな、アレディ、ネージュ」

二人には無事に帰ってほしい。今この時は、切に願った。

「リンク殿や、この世界の方々に死凶星が落ちぬよう祈っております」
「……べ、別に寂しいなんて思ってないんですからね!」

アレディとネージュが光に呑み込まれる寸前に残した言葉がやけにはっきりと届く。

なんだよそれは、と苦笑する間もなく―――二人との別離は一瞬で終わった。



「……どうだ、マスター」
「ああ。無事にあちら側に辿り着いたようだ」

ほっと胸をなで下ろす。

同時に本日最大の行事が終了したことでメンバーがぽつぽつと“終点”から開いたワープホールを利用して別の場所へ移動する。今日は気を利かせたらしいマスターの命で乱闘も無いことだし、これから各々好きな時間を過ごすのだろう。

俺も皆に習って歩き出しかけ、ふと流れに乗らない一つの球体を発見した。

「うぁぅ〜…」

何のことはない、カービィである。純粋な性質が似通っていたせいかアレディとの仲が極めて良好だったこの幼子は、瞳を潤ませて微動だにしなかった。

「そう気を落とすな、カービィ。彼が我々と紡いだ絆を無にしないと約束したではないか」

ライバルというより保護者役と化しているメタナイトが必死に鼓舞するも、カービィは今にも号泣寸前の体であった。

と、そこで俺はカービィの手の内に握られた物体に意識が傾く。
丁寧にラッピングされ、菓子類が詰まった小さな袋。どう見積もっても贈り物に他ならない。

って、まさか。

「メタナイト、カービィが持っているのは……」
「……貴殿の予想通りだ」

恐る恐る尋ねた俺を察してくれたメタナイトの力ない返答に唖然となった。

カービィは二人へ贈るお土産を入れ忘れていたのである。だからこんなに見ていて痛々しい程に落胆しているのかと思うと、かなり可哀想であった。

同時に何とか解決してやりたいという願いも生まれ、俺は背にした『時空の扉』を仰ぎ見る。マスターの緊張が解けた影響なのか、蒼の円は次第に縮小しながらも現存していた。このタイミングならば、まだ間に合うかもしれない。

「カービィ、まだ扉が残っているうちにそれを投げ渡してこい!」

俺は声を張り上げてカービィを叱咤した。びくりと飛び跳ねた球体はしかし、俺の意図を理解したのかお土産を片手に軽快に走り出す。

ててててて、と一生懸命に走ったカービィは、今にも消失しかけている『時空の扉』に向かって自身の贈り物を投げる体勢になり―――


こけっ。


―――『時空の扉』一歩手前で盛大に躓き、走る勢いをそのままに転がって、光の中に「とぷんっ」と溶けてしまった。


…………………………。


「って待てぇぇぇぇぇっ!?」


絶叫するが時既に遅し。
桃色の球体を呑み込んだと同時に『時空の扉』は消失した。

そしてあちら側に渡ってしまったカービィを連れ戻す術は、疲れきったマスターしか持ち合わせていない。

―――どうやら、あいつらとの繋がりはまだまだ続きそうであった……。



END?


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