聖夜の約束
質素な装飾を施された窓の向こう側は、曇天に覆われた夜の城下町。薄暗い雰囲気はしかし、人々の快活な空気に押しのけられる形で姿を現すことはありません。色とりどりの赤や蒼、黄色や緑の様々な灯火が街を縦横無尽に飾り立て、笑顔と笑い声が交錯しています。寒冷な空気にも関わらず、民の明るさはここハイラル城の一室にまで伝わってきます。
私は一人、眺めていました。寒さに凍える心配はない暖かな室内。私の置かれた立場は至って恵まれた環境です。
しかし何故でしょうか。
とても、外が羨ましいと感じるのです。
半刻程前。
隣国との交流を目的に開催された会食は確かに絢爛豪華でしたが、何かが足りません。満たされていないのです。
私はただそれを求め、自身を城下町に投影することしか術はありませんでした。
やがて睡眠の時刻を迎え、私はベッドにうずくまります。誰もいない室内に一人。慣れました。それが私の役割なのですから。
暗闇に包まれていき、私の意識は現実から乖離していきました。
なあ、寂しいのか?
虚無の空間に漂う私に誰かが語りかけてきました。白海に浸り思考を預けていた私は導きの火に惹かれ、返します。
―――いいえ。違います。私は寂しくなどありません。
嘘だろ、それ
あっけなく嘘を見破られたので、私は驚きよりも反発心を覚えました。動揺を悟られてしまっては王族としての矜持が揺るぎかねないのです。
―――嘘ではありません。私は満たされた環境にいるのですから。
すると声は観念したように、私に背を向けます。
そうか。俺はてっきり、寂しいと泣く女の子が君かと勘違いしていたみたいだ
ごめんな、と彼は金の髪を翻して消えていきます。
ずきりと痛みが走り、咄嗟に意識を伸ばしていました。
―――待って。…ください。
小さな彼の消滅が私の心を素直にさせてくれました。ごめんなさい。私は、本当は…。
わかった。俺、傍にいるよ。っていうか実は俺も、一人で寂しかったんだ
似た者同士だな、と彼は微かに笑い、私を許してくれました。
不思議な安堵感に包まれます。こんなにも温かな気持ちは久方ぶりでしょうか。
あのさ、また会えるかな
彼は問いました。
こうして語り合えた事こそが夢のような奇跡なのに。
…じゃあ、約束しよう。君が助けてほしい時、俺が一番に駆けつけるよ
目覚めの光に包まれて、彼は名残惜そうに別れを告げました。
夢の中で得た約束。
それは、私が求めていた最高の贈り物でした。
◆補足(という名の蛇足)
・子ゼルダとサンタリンクの小話の予定で書いた
・一人ぽつんな子ゼルダ萌え
・さてリンクをどうやってサンタにしようかな
・って待てよ、ハイラルに聖夜(クリスマス)ってあるっけ
・無いよね西暦じゃないからね
・どうしよう(いつも滑り出しが無計画特有の悩み)
・子ゼルダ眠らせようそうしよう
・夢の中でリンク登場成功
・でも時系列がおかしくね?
・だったらリンクも子供にしよう
・文字制限さえなければ、もう少し続いたのだが…!
まあいっか子リンゼル萌え
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