勇者のなんでも相談室 part2
拍手お礼・スマブラX
『勇者の何でも相談室 part2』
ぽぉよ…。
ぽよっ。ぷ。ぽぉぽ。
ぷぅ……。む!
ぽよ! ぽよぉ…。
うー、けぇき、けーきぃ!
ねーえ、りーん。けーき、めっ!
ぽようー…。ぷー…。
ぽーよ……。
▽ ▼ ▽
それは災難だったな。
珍しくも酷く落ち込んだ様子が気になっていたが、そのような事情ならば致し方あるまい。
大切に保管していたショートケーキを赤帽の超能力少年と風の勇者に食べられてしまった深い悲しみは私にも伝わってきた。彼らに悪気は無かった手前、怒りを振り下ろす場所がないのも充分に理解できる。
だがそう気に病むな、星の戦士たる者らしくもない。普段通りの明るく元気な様子を見せてくれないだろうか。いつまでも影のある悲哀顔だと、貴殿のライバルとしても見ていて痛々しい。
……。
カービィ、一つ提案がある。
光の勇者に抱きついたままでいい、聞いてほしい。
実は先日コイン制の戦闘によって私の懐が多量に黒字になってな。だがこの世界の硬貨は興味がなく使い道も皆無、といっても買い物の役には立つ。
そこで、だ。
今回は私一人で街を見回ろうと計画していたが、もののついでにカービィの楽しみの寄りどころであるケーキも購入しよう。
まだ午後3時の時間には余裕がある。共に菓子店を巡り、貴殿の好きなケーキを選ぶといい。
なに、気にするな。私はカービィのライバルだからな。
―――そうだ、リンクも我々と共にどうだろうか?
・◇・◇・◇・◇・◇・◇・◇・◇・
長かった。
非常に長い会話だった、色んな意味で。
俺は目の前の仮面の貴公子と中腹部で泣きべそをかいていた桃玉のやりとりを黙して聞いていた。
そもそも俺は貴重な自由時間を読書に費やし読了感を味わっていたのだが、そこにいきなり豪速球並みの速度で突入してきたカービィのタックルと蝙蝠の翼を従えたメタナイトの波状攻撃が俺を直撃したかと思えばこのやりとりである。今でも床に打ちつけられた衝撃で体の側面が被害を訴えているのはこの際置いておこう。
最初こそはぐすぐすと泣いていた桃玉に何かあったのかと心配し、唯一カービィ語を訳せるライバル兼保護者のメタナイトに翻訳と状況説明を求めたら『また』である。
どうやらマスターの伝聞はきっちりメンバー内に定着化したらしく、俺はめでたく相談役が決定していたようだ。
不本意に尽きるが以前にも純朴天使の相談……いやあれはほぼ自慢だったか。とにかくあれ以来、俺の時間はこうした出来事に潰される運命にあるらしい。後で創造神に落とし前と代償をつけさせないとな。
それはさておき。
俺はなけなしの自制心を一旦宥めすかせ―――たった一つの言葉に集約させる事に尽力した。
目を瞑り、カービィの弾力性ある柔らかみを慈しみを込めて撫でる。メタナイトの配慮が幸を成してたちまちのうちに元気になった桃玉の喜びようといったら、こちらまで癒やされるようだ。
だがこれ以上耐えるのは少しばかり……いや、かなり限界だ。
何故か?
俺の性格云々は別の話だが、これは誰しもが抱く共通のツッコミだと思いたい。
「メタナイト」
「如何したか、リンク?」
俺は大きな息を吐き、覚悟を決めて一言。
「お前ら相談しに来たんだよな?」
おしまい。
あとがきのような呟き。
カービィとメタナイトのライバル兼保護者な妄想から派生した拍手御礼でした。
カービィのぽよ語録をナナシがどれだけ書けるかが目標だったのですがあえなく失敗しました。でも桃玉可愛いよ桃玉。自分自重。
まず無邪気なカービィが涙目さながらにリンクに抱きつき、楽しみに取っていたケーキが無くなった悲しみを全力で伝えようとしますがカービィ語が理解不能なリンクは疑問符しか浮かばない。ですがカービィは幼子同然で言わずもがな可愛いので、意味がわからなくともリンクは存分に甘えさせます。
この辺のやりとりはもう親子でよくないか?と一人悶々としてました。この時点でナナシは非常にアレだと思います。
しかしライバルを自称する仮面の貴公子も保護者面では負けません。でしゃばった結果、勇者の相談室が何のためにあったのか曖昧になりました。相談に来たのに即解決、これでは相談役に納得していないリンクも流石に脱力します。こうして自由時間を削られた勇者は例のごとく創造神を更にぼこ殴りに行く予定です←
では、拍手ありがとうございました!
2010.05/20
ちょっとオマケの余談
「う!」
「ご満悦だなカービィ」
「うむ、これで元気を取り戻したカービィとの戦いに全力を尽くせるというものだ」
「けーき!」
「はいはい帰ってからな。で、財布の中身は無事なのかメタナイト」
「む、大丈夫だ。如何にカービィの胃袋がブラックホール並みだろうが貯えたコインはそれを遥かに凌駕するのでな、心配には及ばない」
「…つーかどれだけ稼いだんだよ」
「何、今まで使い道が無くてな。この世界に招かれてからというもの貯蓄を繰り返したらこうなったのだ」
(質素すぎる…)
「ぽよ?」
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