機械人形と獣の旅




初めまして、僕はロボットです。



今日も僕らは旅をしています。

旅の仲間は小さくて丸い獣のマナ。元々一人旅だった僕に、マナが僕の茶色の頭の上にいつの間にか居座ったのがきっかけです。

今では僕と同じように同じ景色を眺めてくれます。僕にとっては掛け替えのない、そして心強いパートナーだと胸を張って宣言します。

僕の旅は相変わらず乾燥しきった風に吹かれ、穴ぼこだらけの大地を歩くことに始まります。風化したコンクリートの残骸や、舞い上がる土の風が僕らに旅を実感させてくれるのです。

気ままな旅。僕の興味は惹きつけられてばかりです。それはマナも同意見だと感じます。だって相棒ですから。

大地から視線を逸らし空を見上げると、視覚範囲一杯に蒼一色が映し出されます。
でもすぐに天気が気まぐれを起こす確率が極めて高いです。数多の経験を重ねてきた、僕の検証結果がはじき出したのだから……まあ当たるでしょう。
マナの体調を崩さないためにも、僕はひたすら歩きます。だってマナは僕と違って有機生命体ですし。

しばらくさまよい歩いて、僕は視覚媒体の先に古びた街並みを確認しました。
時を同じくして、微量ながらに酸性雨も降り出しました。丁度良かった、今日はここまでのようです。ゆっくりと躯体を休めることにします。

マナは僕が一軒の家に足を踏み入れたとたん、ぴょんとボールが跳ねるような動作でベッドらしき物体にダイブしました。そこかしこがボロボロな代物でしたが、小さなマナにとっては充分な寝床でしょう。僕はロボットなので体育座りで満足できますし、太陽光があれば電力は供給され続けるので心配はありません。
僕は足元に積もった塵を払い、適当に座りまし―――。

ぱきっ。

いえ、何かを踏みつけてしまいました。僕は緩慢にも思える動作で慎重に右足を退けさせ、踏みつけた何かをデータに記録します。
劣化した写真を挟んだ飾り台と判別できました。薄汚れたガラスが放射状に砕けていましたが、写真は無事でした。流石に色褪せている形跡があったものの、しっかりと時間を切り取っています。

写真の向こうに写るのは、温かな家族なのでしょうか。みんながみんな笑顔を浮かべています。
特に僕の記憶にインプットされたのは、その中にいる少年です。驚くことに彼は笑顔であることを除けば僕の外観とよく似ていました。

僕もいつか彼のように笑えるだろうか?

何とも言えない願いに僕の感情回路が満たされていき……僕とマナは夜を待たずに、雨に背中を押されて休眠しました。


僕が自律起動を開始した時刻は、星が天を彩る時間帯でした。
雨は止み、開かれた窓が今夜の景色を切り取っています。

月の満ち欠けからして、今日は三日月。僕の好きな真円はまだ数日かかるようですが、マナは小さな体に反するようなつぶらな瞳を輝かせていました。流星群が好きなマナは、こうして天蓋が開く日は夜が明けるまで流星が流れるのを待つのです。
こうなったらマナは止まりません。僕はとりあえず、マナと共に瞬く星たちを見上げます。

やがて朝日を迎えました。

出発の朝、マナは指定位置にぴょこんと乗り、僕はシステムの異常がないか点検します。
……オールグリーン。
ばっちりのようです。
僕は頭の上の相棒に右手を伸ばし、撫でました。

―――さあ、行こうマナ。
宛のない旅だけど、昨日とは違う今日を歩こうよ。

こうした日々を繰り返して、今日も僕らは旅をしています。



END.


急にオリジナルが書きたくなって投下しました。荒廃した世界を旅するロボットと獣がぱっと浮かんだナナシです。
ちなみに獣の属する種族は特に考えてません←
まあ、犬と猫の性格を均等に割り、兎と鼠の外見を足して半分こにしてください。
……。
自分で書いておきながら余計に想像できなくなったというのはここだけの話で。
煮え切らないラストですみませんorz


[back]   [next]






「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -