02





俺は眠気の残滓を名残惜しく思いながら、イリアに疑問をぶつけた。

「なあ、イリア。俺……今日休みなんだけど」

そう、今日は休日のはずだ。牧童として働き、ようやく掴んだ休日。熟睡しようが構わない自由時間を与えられている。
それを無理矢理起こされた。これでは否が応でも不機嫌の度合いが高まるというものだ。

しかし、

「何言ってるのよリンク! もしかしなくても約束を忘れてるわね!?」

イリアが爆発した。どうやら地雷を踏んでしまったらしい。

ん? 『約束』……?

イリアの怒号に引っかかりを覚えた俺は、即座に脳内会議を開催した。

俺、何か約束したかな?

見上げた先のイリアの顔が怒りで真っ赤だ。闘気を顕現化しそうでもある。

というか、早く答えを思い出さなければ―――ヤバい。

危機感に追われた心境は、瞬時に答えを示し……。

…………。
…………………。
…………………………。

「…………ああっ!?」

俺は愕然となってしまった。

なんてことだ。
すっかり失念してしまっていた。

『約束』、あったじゃないか!

「思い出したなら急ぎなさい! あと少ししか時間がないわよ!」
イリアの忠告は的確なもので、開かれた窓際の光景は既に日が『登りかけて』いた。
夜のカーテンが僅かな朝焼けに追いやられ、刻々と色合いを増していく。

ありがとう、と告げる間もない。
俺はベッドから跳ね起き、慌てて支度に取りかかった。


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