―――ばしんっ!!
五感と思考回路が回復するまでに数秒。
痛覚が悲鳴をあげるまでに三秒。
幼なじみの存在を認識するまでに一秒かかった。
「いい加減に起きなさいっ!! リンクッ!!」
……いきなり平手打ちをかましておいて、これはどうだろうか。
俺は頬の痛みをこらえて半身を起こし、隣で仁王立ちしている少女を見上げた。
金髪のショートヘアー。翡翠の瞳と端正な顔立ち。動きやすい服装が活動的な性格を象徴しているようである。
オマケにかなりのお節介で、なおかつ強気。はきはきとした性分の……俺の幼なじみ。
彼女の名前は『イリア』。
トアル村の村長の娘だ。美少女の類に入るだろう、きっと。
……まあ、柳眉をつり上げて怒っているせいで、かなり魅力が半減しているというのはここだけの話だ。
「はいはい、起きた起きた」
「『はい』は一回!」
しかも母親っぽいんだよな……。俺の年齢を考えたうえでの発言なのだろうかと小首を傾げたくてたまらない。
ともかく、その質問は後に回すとしよう。
今は、他に尋ねたいことがある。現在進行形でな。
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