まだまだ、これからだ。
元より未熟者なのだ。勝つための術を模索し、その上で師匠とやり合う。そうして腕を磨き上げ、練度を増していくことが目的だ。
いつか勝つ、しかし―――今はまだ。
湧き上がる高揚感に身を委ねた。
自分でも口元がつり上がっているのがわかる。
面倒なことは嫌いな性分だが、これだけは譲れない。
不思議と、それでいいと納得しているのだ。何故、と問うのが馬鹿馬鹿しいほどに。
よし……!
俺は右薙ぎの軌道を力一杯振り払った。
がっ!!
弾かれた木刀の痛々しい音が清涼なる森に木霊する。同時に横っ飛びを行って距離を取った。
再び対峙する形になる。
「……まだまだだな」
師匠が口を開いた。
「いいや、これからですって師匠」
「ぬかせ、あんな読みやすい体当たりはなかったな」
「その割には反応がイマイチでしたが」
「そうだな、俺としたことがうっかりしていたようだ」
「素直に驚いた、と言ってくれませんかね?」
「半人前が何をごちゃごちゃ言っても結果が全てだ」
言い分をばっさり切り捨てた割には、随分と嬉しそうな雰囲気だ。
ふっ、と師匠は口元をつり上げ、
「…………来い」
誘ってきた。
俺は、頷いた。
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