11
約束の場所。
淡い木漏れ日に溢れ、しかし森の緑がすっぽり抜け落ちている空間。緑の天蓋と剥き出しの固い土が半球状に広がり、まるで闘技場のようだ。
……いや、実際に闘技場と化しているのだが。
―――ブンッ!!
鋭い風切り音が鼓膜を直撃する。
とっさに剣の軌跡を辿り、木刀を構え直す。次の斬撃に備えるために。
―――剣術稽古。
師匠曰く、『実戦を踏まえた試合形式』らしい。まったくもって容赦がないのだ。
もしイリアがこの試合を見学していたら、即アウトだろう。あの心配症ならやりかねない、
……ガッ!
木刀が斬撃にきしんだ。
―――余計な考え事は後回し、だな……。
俺は即座に剣術以外の思考を振り払った。
相手の攻撃を予測し、自身の行動を瞬時に判断―――脚に命令を送り、俺は一歩後退した。
一旦この間合いから離れなければ。
じゃり、とした土の感触が緊迫感を生む。
一瞬の動作であろうとも油断はならない。
対峙する相手は追い詰めてこなかったが、連続的な斬撃の手を緩め、こちらの動向を伺っている。
気を抜くことはできないようだ。
汗が頬を伝う。
お互いの領域が展開される。じりじりと胸が妬ける。緊迫した空気に思考が澄み渡っていく。
次、は。
様々な攻撃パターンを脳内に浮かべ、一撃を加えられる可能性の高い順に整列させた。
平行して単調な攻撃らを絡み合わせ、複雑なものへと変貌させる。
同時に相手が俺の攻撃を読んで回避するか防御するかを自身に問う。
読まれるのではなく、読まなくては。
俺は火花散る視線を真っ向から受け止めたが……対峙した意志の光は眩しく強烈で、予測がままならない。
……流石は俺の剣技の師匠、手を抜く気はさらさら無いらしい。
読めない、と理解した俺は、先手を取る作戦を優先させた。後手に回ればいいツボだ、防御よりは攻撃側に利がある。
…………よし!
決意を固めた俺は、自身への行動命令を送った。
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