10
ここは………。
フィローネの森、エポナの背の上、約束、朝焼け。
ぼんやりと浮かぶ文字列が混乱した俺の理性を僅かに取り戻させた。
どうやら通り道を若干ずれてしまい、枝葉にぶつかったらし、い。
「………………っ!」
がつん、と頭を殴られたような鈍い痛覚の波がこめかみに走る。
このまま一瞬でも油断すればふらつきかねないくらいの頭痛に思わず顔を歪めてしまった。
何だ、今のは……?
定まらない焦点を無理矢理に集中させながら、俺は先ほどの白昼夢に当惑した。
朝に視た夢の続き、とでも例えればいいのだろうか……。
…………………………。
だったとしたら、俺は相当なアホらしい。
自分に悪態をつきたかった。
図らずも二度寝してしまった事実がここにある。
焦っている状況下で白昼夢とは恐れ入った。現実逃避にもほどがありすぎるではないか。
夢は夢だ、何らかの意図があったとしても現実には有り得ない。
有り得ない、のだが。
……深くは思い出せない夢。
おぼろげな記憶。
勇気ある若者。
光と影。
浸食、黄昏。
大切な何かを見落とした錯覚がする。
違う、あれは夢だ。
しかし…………
正反対の意見が俺の胸中でせめぎ合う。
……………いや、今は考えるな。
俺はなんとか夢を振り払った。
約束の場所まであと僅か、ここで俺が立ち止まるわけにはいかない。
―――間に合えっ!
断片的な記号らを強制的に追いやり、俺はエポナに号令を送った。
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