07






広大な森を相棒と駆け抜ける。

風を切る感覚が全身を覆い、緑の景色が後方へ流れていく。冷たい朝の空気に思考が冴え、エポナに指示を送ることだけに集中する。

幻想的な新緑のざわめきが、風を切る身に染み渡っていった。



―――フィローネの森。



トアル村に恵みを与え、光の精霊の守護に包まれていると言い伝えられる神秘の森。

朝焼けの光が薄闇を徐々に照らし、幻想的な空間を一層明るく照らし出していく。

間に合うか……?

俺は頭上の夜明けに焦燥感を抱いた。約束の時刻は『日が登る頃』。間に合わなければ……。


モイさんの熱血指導が熱を増す。


…………それだけは勘弁したいっ!!

頬に冷や汗の感触。俺の嫌な予感は大抵当たるのだが、こればかりは絶対に外すべきだ。

焦燥感が愛馬のエポナに伝わったのか、風を切る音が強くなる。

ふと、俺は昨日の約束を守るよう努力すべきだったと後悔した。



―――約束。
これは昨日の昼過ぎ頃の話になる。



牧場で働き、一通りの仕事を終えていた俺は草むらに仰向けになって一休みしていた。

澄み渡る青い空と白い雲、眩い光。山羊たちは自由気ままに青草を貪り、のどかな光景に拍車をかけている。

ああ平和だ、と独り言を呟いたものだ。平和なのは良いことだ。刺激を求めずとも俺は充分幸せだし、牧童の暮らしも気に入っている。

……どこから来たのかもしれない子供を、無条件に引き取ってくれた村人にも感謝しているしな。

それはともかく、俺はのんびりとした居心地のいい時間を味わっていたわけだ。

そこへ。

「リンク?」
「起きろ、リンク」

イリアとモイさんがやってきたわけだ。



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