05
「おはようエポナ」
苦笑しながらも俺はいつものようにエポナに語りかけた。
ちなみに『エポナ』とは俺の愛馬だ。
性別はメス。銀の鬣と色つやのよい茶の毛並みが密かに自慢でもある。性格も穏やかで文句無し。
最高の相棒だ。
エポナの銀の鬣は朝日を浴びて一層輝き、逞しい四肢と巨体がよく栄えていた。
……イリアはエポナの手入れをしてくれていたようだ。いつにも増してエポナが輝いている。
同時に、エポナの背に荷物がしっかりと固定されてもいた。
……何から何までやってもらってばかりだな……。
幼なじみに申し訳ないと感じる寸前、俺は急接近してきた気配にたじろぐ。
イリアだ。
ばっ、と顔が急接近してきた。
ち、近っ。
翠の瞳が俺の驚きの仕草を見事に映しこんでいる。
新緑の色に吸い込まれそうな錯覚。
つり上がっている大きな瞳は、今にも爆発しそうだった。
が、説教する時間が無いと判断したらしい。
朝焼けが光を増していくのだから無理もないな。
「……まったく」
イリアは呆れた様子で一歩後退し、続けて長い溜め息を吐いた。
助かったような助かってないような。
どちらにせよ急がなければならない事態なのは確実。無言の意見の一致により、俺は木刀を背中にくくりつけ、エポナの背にまたがった。
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