04
森に溢れている朝焼けの空気が爽やかだというのに、安らぐ暇すらないのか……。
外界の感触にふける間もないことを嘆きつつ、俺は眼下の空間を確認し、
扉の出入り口先から『飛び降りた』。
落下。
―――実は、俺の玄関は特殊なのだ。例えるなら、ちょっとした崖っぷちに近い。
だからこそ梯子が常備されているのだが、俺は家に入る時くらいにしか使っていない。
それに―――村の子供たちからすればたじろぐ高さだろうが―――俺はこれくらいなら平気だ。
なにしろ飛び降りることに慣れているからな。毎日の日課になりつつある。
まあ、お節介なイリアにとっては『いつ怪我するかわからないから止めなさい』らしいが……。
つかの間の滞空時間が終わる。
両足が土の感触と衝撃を伝えてきた。とっさに反動に任せて膝を曲げ、衝撃を和らげる。
「よっ…………っと」
今回も成功した。ふう、と息を吐き、
…………はっ、と我に返った。
イリアの姿を視界の端に捉えた俺は、自らの失敗を自覚した。
そういえば、イリアがいるのを忘れていた。
それも目の前で飛び降りたのは失策だ。
……もしかしなくても怒ってるな、これは……。
冷や汗が頬を伝う。
すっかり忘れていた。イリアは『危険』を一番嫌うということを。
いつかの話になるが、『リンクの運動神経は異常なのよ』と言われた記憶がある。
生まれもった身体能力だから活用したって罰はないだろうが、子供たちが真似をしたら『危険』な行動に違いない。
そんな視線がチクチクと針を刺すように俺を見ていた。地味にキツい。二度とイリアの前で無茶をしないように、と改めて決意し、俺はイリアの視線をかわしながら駆け寄った。
と。
『ブルルル……』
カポカポ、と足音をたて、一頭の馬が俺に擦りよってきた。
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