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 この身に纏った柔らかな鎖。簡単に振りほどけそうな弱さに油断すれば、気づいた時には逃れられないほど深く捕らえられている。
「んむぅ……っふ、んん……むぐ……」
 サヤの舌がそそり立つ性器にまとわり付く。小さな口で不釣り合いにグロテスクなものを頬張り、舌と唇で存分に味わう。死せる私に生殖機能があるなど、馬鹿らしいではないか。おそらくこの熱は欲望のためにあるのだ。サヤを犯し、心も体も私の存在で埋めつくしたい。その欲を満たすためだけに。
「んんっ! っぷは、ぁ……んぅ、あむ……」
 サヤの喉が動き、唾液と共に私の欲を飲み下す。今なお勢いの収まらない肉棒を手の平で包み込み、更に煽るように指をうごめかせる。先端をくわえ込み、やわやわと唇で愛撫しながら私を見上げる。潤んだ瞳。昼間に見た幼い笑顔が淫靡な雌の顔に重なった。どちらが真実か、考えるだけ無駄だ。片方だけでも手に入れたいと願うほど謙虚になるつもりはない。……お前のすべてを。

「サヤ、上に座れ」
 名残惜しそうに唇を離し、促されるまま私の上に跨がる。焦らされ疼いた秘所は濡れ、貫かれる時を待っている。こうして寝床でサヤを前にすると、朽ちて久しいはずの体が熱くたぎる。恥ずかしげもなくサヤの肉を求めて起ち上がる。
「あぁぅん……はぁっ、はやく……ちょうだ、ぁんっ! も、我慢でき、っ……」
 そしてサヤもまた別人のように淫らに腰をくねらせ私を誘う。誘惑に乗せられるなど愚かしい……そう思いながら、堕ちていく感覚にすら愉悦を覚える。共にいられるのであれば、どこへでも。今この時だけは愛を囁いても構わない。
「ああぁっ! はぅっ、あぁん……スカルミリョーネの……わたしのなか、いっぱい……」
 サヤの吐息も、密着した腹や胸、背中にまわされた腕も絡み付く足も。すべてが堪え難いほど熱く、私を煽る。

「サヤ……」
「あぅっ、あんッ! や、囁か、ないでっ……感じちゃ……はぁあっ、あぁぅ!」
「……あまり煽るとお前の体が持たないぞ」
「んくぅッ! だっ、だってぇ……あぁ、あっ! はぁっ、アアッ、んんっ」
 突き上げる動きから逃れようとサヤの体が揺れる。次第に快楽を導く動きへと変わり、最後には自ら絶頂を求めて激しく腰を上下する。
「いやらしい奴だな、サヤ。いつからそんなに淫乱になった?」
「あぁんっ! や、ばかッ……誰の、せいだと……あっ、うぅッ、だめぇ! っもう、イッ、ちゃぅ」
 ……それこそこっちのセリフだ。誰のせいで変わったと思っている?
「まだ駄目だ」
「ッああ……んぅぅ、いじわ、る……」
 サヤの腰を掴み、自身の動きも止める。ここはお前に倣おうか。求められたものならなんでも与えよう。だがすべてではない。私のすべてが欲しければ、お前も差し出せ……。
「……どうしてほしい」
「んっ……はぁ……好きに、なって……わたしの、ぜんぶ」
 一瞬、サヤの表情が変わった。淫靡な陰は消え失せ、忌々しいほどの眩さと、幼い泣き顔。これほど近くで見つめ合いながら、焦がれるたびに手に入らないと実感させられる……。
「いつも……捕らえられるのは私の方だ。お前ばかりが私のすべてを奪って……」
「……ぷっ、あはは」
「何がおかしい」
「ばか」
 上気した頬を擦り寄せ、サヤの手が私の胸に触れる。萎えかけた心にサヤの言葉が再び火をともした。
――わたしの心、もうずっと前からここにあるのに……これ以上だれかにあげられるもの、残ってないよ

 柔らかな鎖が締め付ける。それは温かく、軽く、優しい。ともすれば存在を忘れてしまうほど弱く……しかし確かに、私を縛り続けている。気づけば逃れたいとすら思わない。触れるたびにより深く、抱き合うほどにより強く、もっと捕われてしまいたいと願っている。

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