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娘っ子


 ゴルベーザの上に座ったまま布団をかけてもらって、身長差のせいで向こうの肩が剥き出しなのが妙に気になって、でもあっちは服着たままだからいいや、と。
 ごまかしてみようと努力する。でもやっぱりそのぅ……ジンジンするんだ。動かなくても、鈍い痛みは引かないままで。なんか奥の方が疼いてじれったい。痛いけど痛いだけじゃない、気持ちいいけど気持ちいいだけじゃない。
 早まったかなぁ。限界ギリギリまで待たせるべきだったかなぁ。ううん、恥ずかしいよりはいい、耐えやすい。と思う。
 一線を(もう越えてはいるけど)通り過ぎてしまえば、なんか突き抜けちゃって、ゴルベーザに抱かれてると安心する……だけになる。
「なんか、このまま寝ちゃいたいかも」
「……今日はそれでも構わんぞ」
「え、でも……」
 それはつらくないの? だってまだ……いや、あの、ねえ?
「サヤは男女どちらがいいと思う?」
「……は、は、はい?」
 何の話だ! 子供の話か! ぶっ飛びすぎだよ……そ、そう簡単にはできないんじゃないかな。だいたい、どっちがいいなんて言われても、まだ子供って言葉の実感さえ薄いし。あんまりそこばかり期待されてもプレッシャーというか、じゃ何を期待するんだって言われてもまた困るけど。

「え、えと……わたしはどっちでも……」
「そうか……」
 なんか虚ろ。がっかりしたのかな。だけどわたしみたいな小娘に子作りに熱中しろってのも無理な話だよ。わたし自身が大人になるまで待ってほしい。
 それにね、あの、だから。だ、段階ってものが、あ、あ、あるじゃん。まだやっと心の準備ができたかな〜? ってところで、子供ができたあとのことなんてもう……まだ……。
「あの……一応言うけど、これじゃまだ、えっと……まだだよ?」
 ポカンとバカっぽい顔になったゴルベーザに、なんかとてもとても不安になった。そもそも最初から齟齬があったりしたらどうしよう。こっちの世界での子供の作り方って……そんなの誰にも聞いたことないし、聞けるわけもない。どうせ大きな違いなんてないだろうと思っ……は、早まった? それとも、まさかまさか、ゴルベーザは知らない? それはいくらなんでも……。
「まだ、とは?」
「や、あの……これじゃまだ、入れただけじゃ子供は……」
 何を言わせるの! バカ! うわああもうやだー!
「何を言っている……そんなことは当たり前だろう」
「そ……だよね。うん」
 よかった。わかってた。多分、よかった。
「サヤ……すまない。気遣ったつもりで焦らしていたようだな」
「え……、ええっ?」
「最後までしてほしかったのか」
 あ、また邪悪になった。……なんかね、変なんだ。……故意に勘違いしてない? よくなかったのかもしれない。

「……お前に淫らな欲を抱くのは、私が間違っていたからだと……思っていたのに」
「え……っわ、あぁ!」
 何か言葉を返す前に押し倒されて、布団がずり落ちて冷たい空気に曝される。視界の両端から腕が伸びて、覆いかぶさる影以外なにも見えなくなる。砂がこぼれるみたいに髪がキラキラして、思わずぼーっと見惚れてた。
「結局、変わっていないのだな……サヤを引きずり込みたいという想いも」
 今更なに言っちゃってんだろ。わたし帰れないって、言ってるのに。誰のせいだか、まだわかんないの? こんなに……喜んでるのに。
「……汚してしまいたいと、ずっと……」
 自分よりずっとでっかい男の人にのしかかられて、なのに感じるのは恐怖より安堵で、襲われてるなんて考えもしない。守られてるとさえ思えた。それよりもただ、抱え込まれてたさっきまでより少し離れてしまった距離が切ない。
「……もっと、くっつきたい」
「いいのか?」
「受け入れるのが汚されるってことなら、わたし、もっと汚されたいよ」
 今更、だよ。だってもうこんなに引き込まれてる。それを幸せだと思ってる。……もう遅いんだから。
「もう、離してあげない!」
「……それは私の台詞だな」

 腰の下に腕を差し入れられて引き寄せられる。また密着して、狭くなった分だけくわえ込んだものの形も感じ取ってしまって、一番やわらかいとこに熱い塊が埋め込まれてるのを改めて実感した。あ、やばいかも……と腰を引きそうになった瞬間、押しつけるように動かされて。
「え、あっ、ま……待っ、奥、当たって……や、あ! あぁッ」
「もう充分待っただろう」
 だって、今日はいいって言ったじゃない。……座ったままで、みたいなことも。……だって、だってこんな、引き抜かれるたびに肉が擦れて、突き立てられるほど熱くなって、ちょっとずつ動きが速く大きくなって……
「あぅっ! んっ……ひっ、ア……あぁっ、や、っ! はっ、あぁ!」
 じっと抱き合って馴染んだだけ、動くと違和感が膨れ上がる。身体が弓なりに反るのに合わせてベッドがギシギシ揺れて、胸元に吸い付かれて小さな痛みが走った。抱き寄せられた腰の内側に先端を押しつけられると、頭が真っ白になる……
「っだめぇ! やっあ、あぅっ、あ、あっ! や、あぁ! あッ」
「……心など読めなくとも、分かるものだな」
 こんなに求めてるって。こんなに気持ちいいなんて。……絶対、変。壊れるんじゃないかってくらいに感じて必死でしがみつけば、同じだけ強く抱かれる。襞のひとつひとつ撫でられるごとに体が跳ねて、奥から奥から溢れ出すなにかが、突き上げて掻き回されて音を立てて……
「あぁ、い、あっ! ッ! アァ!」
 泣いちゃう。死んじゃうよ。何か強大なもので染め上げられて、わたしが消えてしまいそうで、怖い……怖い、怖い、怖い!
「やだっ、や、あ、ふぅっ、う、んっ」
「サヤ……ッ」
 低く、耳元で……大丈夫だって、ちゃんと捕まえてるから、どこにも行かせないからって、声が
「あぁっ、あ、あ、っ────!!」

 内で外で弾けて、まだ何度か揺さぶられながら、空っぽの頭で、これ……何かに似てる気がするなって。思考まで行き着かない何かのイメージ。
 初めてこの世界に来た瞬間? 死の存在を知った瞬間? 痛みを感じた、何が一番大事なのか、わたしの帰る場所がどこなのかを、理解した瞬間……?
 強く、まっすぐ、引き寄せられて、ここに帰ってきた。
「…………」
「…………」
 しばらく時間の感覚がなくて、ふと視線が合ったゴルベーザは息が荒くて、そっから自分がぜぇぜぇ言ってることにも気がついた。……うわ、恥ずかしい。な、なにこれ……。
「っ、……ううぅ」
「だ……大丈夫か?」
 だから全然大丈夫じゃないんだってば! 酸素不足で頭クラクラするし、揺すられまくって体中フニャフニャだし、吐き出されて中がぐちゃぐちゃで気持ち悪いし。恥ずかしいし。恥ずかしいし……恥ずかしいし!
「ううううぅ!」
 泣きながらしがみついたら、声に深刻さがないのを読み取られて笑われて。なんか腹立つ。でも頭撫でられて甘やかされてる……ちょっと嬉しい。ちょっと照れる。総合するとかなりムカつく。
「もぉぉ、抜いてよぉぉぉ!」
「っはは、……嫌だ」
「笑うなああああ!」
 無防備すぎて満たされすぎて幸せすぎて、どうしたらいいかわかんない。すぐ隣にいたのに、今まで遠くて届かなくて。近づいても触れ合ってもなかなか分かり合えなかったけど……やっと、繋がったみたいだ。嘘じゃなくて、いつか終わるものじゃなくて、ホントの家族に。

「……満たされた?」
「少し、な」
「……きょ、今日はもう、ちょっと……」
「別にいい。……まだ先があるからな」
 繋がったまま。抱きしめたまま、少しずつ体重をかけてくる。ちょっと重くて苦しいけど、なんか気持ち良さもある。でも下敷きにしてる腕が、痺れないのか気になっちゃう……。
 体を浮かせようとして腰を持ち上げたら、足の間から水音と一緒にあったかいものが伝い落ちてきて。だからつい。
「んぅっ……」
「……サヤ。足りないのか?」
「ちっ、違う! 手、痺れちゃうかな、って……」
 上半身を軽く起こしたゴルベーザが少し笑ってわたしの腰を掴んだ。そのままぐるっと寝返りを打っ、
「あぁっ、〜〜〜〜っ!」
「あまり締めるとまたその気になるぞ」
「だっ、誰のせいだと……」
 文句言おうと睨みつけたら、なんかずっと嬉しそうな顔してる。こんな笑顔なかなか見れなくて、それでやっぱり、ああ〜って怒りが萎んでしまう。伝えなきゃいけないことがいっぱいあったはず、なのに今はぜんぶ消えちゃって「もう伝わってない?」なんて思ったりして。
 乗せられた体の重みがなくなって少し寂しいけど、厚い胸板に寝そべって、心臓の音聞きながら眠るのも悪くないかな。……だけど、寝らんないかもしれない……。明日の朝がきっと一番恥ずかしい。
 でも……うん、まあ、いいか。幸せだから……。

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